無事故、無違反であっても、運転技能の保証はしません。
是非落ち着いて、余裕・ゆとりを持った運転を日々心掛けてください。

高齢ドライバーの日々の運転

高齢ドライバーの皆様に、直接アンケートをとると、ほとんどの方がご自分の運転に自信をお持ちです。どうしてそう思うのか伺うと、「長い間、一度も違反で捕まったことがない。」「もらい事故はあっても加害事故は起こしたことがない」「いつも安全運転をしている」と言う回答が圧倒的です。過去、危険な場面に遭遇したことはないですか?と質問しても、はっきり「ない」と答えます。

皆さんは、捕まること無く、交通事故も無く、長い間よくぞご無事に過ごされてきました。本当に「ラッキー」な方々です。
速度違反や駐車違反、捕まらないだけで、違反は日常しているはずです。よく言いますよね、「流れに乗る」。これ、速度違反しているときの免罪符にしてませんか?

加齢による衰えと運転技能

高齢者は、個人差はありますが、加齢による衰えは確実に起きています。医学的には、20歳頃の筋肉量は70歳頃には30%低下すると言われています。10年間でおよそ6%程度低下していく計算です。
若い頃、大丈夫だとしていた判断は、この衰えを基準に考えると、すでに「大丈夫」な状態では無いかもしれません。危険と感じて、ブレーキに足を動かし、踏み込んで停止する。この一連の動作すら、若い頃と比べると衰えています。

停止距離、教習所で習いましたが、覚えていますか?
足がブレーキに動くまでを空走距離、実際に踏み込んで止まるまでを制動距離、併せて停止距離と言いますが、一般的には、時速40キロで急な飛び出しに対して急ブレーキを踏む、必要な停止距離は22メートルです。高齢者は、反応が遅くなるので、空走距離が増えますし、筋力も衰えるので、制動距離も長くなります。前回お話しした支援機能がついた車で無ければ、誰でも距離は伸びます。

「危ない、危なくない」、この差は経験値では無く、自分の衰えを自覚して、余裕を持っているかが重要です。
また、車間距離も、今までは大丈夫と思っていた距離を、もう少し長めにとりましょう。ご自分の「危ない」の判断基準はここまでにして、次は、同乗者との関係から見た「危ない、危なくない」についてお話します。

同乗者との関係から見た

「危ない、危なくない」高齢の旦那様がハンドルを握り、横に奥様、あるいは後部座席に奥様が座る。買い物に行く際などによく見かけます。この場面で奥様が「危ない」を発声して夫婦げんかになる。こんな話、よく経験されませんか?ドライバーは「危なくない」、同乗者は「危ない」と感じる、よくあるケースです。
前方視界をきちんと見ているドライバーと後部座席の同乗者では、見ている風景も感じ方も異なります。自分は安全と思っていても、交差点を通過中、脇から車来れば、後部座席の奥様は急に出てきた車に危険を感じ、「危ない」と声に出します。ドライバーは前を見ているから視認できていても飛び出さないと思い、「危なくない」と感じています。

いかがでしょう。「危ない、危なくない」は、乗車している位置でも感じ方が異なります。また、先ほどの通り、反応速度も衰えてきていると、飛び出さない、と判断したこと自体が間違っているかもしれません。「危ない」を避けるためには、十分な車間距離、精神的なゆとり、同乗者の立場に立った判断など、若かりし頃とは異なる注意、気遣い、その上での安全運転が求められます。

最後に

運転に自信のある高齢ドライバーが、私どもの運転挙動調査に協力して頂いた際、見事に脱輪された写真を掲載します。こんなはずじゃない、マイカーでないからうまくいかなった、などご説明を頂きましたが、脱輪した事実は隠せません。

もう一度、チャレンジされますと慎重な運転をされて、無事通過します。皆さん、教習所はいくらでもやり直しできますが、一般道路ではやり直しできません。是非、落ち着いてゆとりを持って運転してください。

執筆者情報

記事の作成・編集:並木 靖幸氏 / 特定非営利活動法人 高齢者安全運転支援研究会 事務局次長

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