事例

お母様のご相続で、長女のAさんがご相談にこられました。相続人はAさんと妹Bさんの2名です。Aさんは独身で実家の近くに住み、Bさんは結婚して県外で暮らし子供がいます。相続財産は、お母様が一人で暮らしていた自宅不動産と預貯金です。生前、姉妹は相続では仲良く半分ずつにと決めており、お母様も賛成してくれていました。
ところが、いざ財産目録を作って遺産分割をという段階になると、なかなか決まりません。
思い入れのある実家をすぐに処分するのは避けたいという思いは姉妹共通。しかし妹Bさんは「県外在住では実家の管理は難しい。Aさんに相続してもらい、その分、預貯金を少し多めに相続したい」と仰り、Aさんは「自分は独身なので不動産は所有したくない。自分に万が一が起きれば結局妹が相続することになるし、実家等は妹に相続し管理してほしい。預貯金は半分で」という考えです。

結果

何回かの話し合いを経て、ようやく「実家はAさんが相続し、預貯金は半分」と決まりましたが、相続手続の完了までには1年半もかかってしまいました。
Aさんは、「こんなに話し合いに時間がかかるなら、母に遺言を書いておいてもらえばよかった」と、今更ながらに感じたそうです。また、Aさんに今後もしものことがあった場合、ご実家は妹のBさんやその子供たちに引き継がれていくこととなりますが、「ゆくゆくは、実家に何ら思い入れのないBの子供たちにこの家が『負の遺産』となってしまうかもしれない。私たち姉妹と同じように子供たちで揉めるかもしれない…」と、お母様の相続手続完了でホッとしたのも束の間、というご様子でした。
そこで、引き続き、Aさんご自身のご相続発生に備え、生前対策や財産整理、遺言作成についてご相談をいただくこととなりました。

遺されたご家族がスムーズに手続きを行えるような「終活」を行うことが大事

遺産分割

 遺言により遺産の分割方法が指定されている場合は、それに従って遺産を分割します。遺言がない場合は、遺産はいったん相続人全員の共有財産となり、相続人全員が遺産分割協議をすることによって遺産を具体的に分配します。
 遺産分割には「不動産は配偶者、預貯金は長女、株式は長男…」というように、資産ごとに分割する「現物分割」、不動産など分割しにくい財産がある場合に財産をもらった人がもらえなかった人に対して差額を現金で支払う「代償 分割」、不動産などの財産を売却して金銭に換えてから分割する「換価分割」などの方法があります。遺産分割は相続人全員の話し合いが必要な為、なかなかまとまらず、1つの不動産をめぐって争いに発展したり、押し付けあうこともありえます。協議が成立しなければ、家庭裁判所の調停や審判に頼ることとなってしまいます。

空き家問題

 近年、日本では空き家が増え続け、社会問題となっており、その発生原因の半数以上が相続と言われます。生まれ育った家への愛着から売却をためらったり、将来誰かが使うのではないかと考たり、他人が住むことへの抵抗感から賃貸にも出さなかったり、と、居住可能な住宅であるにもかかわらず、結果的に空き家になってしまうようです。
 また、空き家が放置されると、倒壊や崩壊、ごみの不法投棄、放火などによる火災発生など様々な悪影響が生じ、近隣住民に迷惑を掛けるだけでなく、「特定空家(倒壊等のおそれがある、適切な管理がされていない、周辺の生活環境を乱しているなど)」に指定され、罰則が適用される可能性があり、固定資産税等の税金の負担が増える可能性があります。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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