2023年に施行された事業用トラックの安全確保に係わる法令の一つに貨物自動車運送事業輸送安全規則(2023年4月1日施行)があります。本ニュースではその一部をご紹介しましたが、特定自動運行の新設やそれに伴う用語の変更など、ご紹介しきれなかった改正内容が残されておりますので、今回は、改正内容の全体的な概要をご紹介します。

◆安全規則の主な改正項目

貨物自動車運送事業輸送安全規則(以下「安全規則」と言います。)の主な改正項目は、次のとおりです。
○特定自動運行に係わる項目新設とそれに伴う用語の変更
○運行管理者の業務の項目追加
○運転者の遵守事項等への項目追加
○遠隔点呼や業務後自動点呼の導入
 上記のうち、遠隔点呼については、本ニュース2023年5月号にてご紹介しておりますので、それ以外の事項についてご紹介します。

◆特定自動運行に係わる事項とそれに伴う用語の変更

「特定自動運行」とは、自動運転レベル4に相当する運転者不在の状態での運行をいい、特定自動運行事業用自動車の運行の安全確保に関する業務を行う者を「特定自動運行保安員」といいます。
 安全規則第3条の2において「特定自動運行保安員」 の業務内容が定められているほか、次段に記す「運行管理者の業務の追加内容」も特定自動運行に係わるものです。
 また、これに伴い用語に関しても、従来「乗務前点呼」であったものが「業務前点呼」、「乗務後点呼」が「業務後点呼」、「乗務の記録」が「業務の記録」、「事業用自動車に乗務」が「事業用自動車の運行の業務」に修正されるなど、細かい修正や変更が行われていますので、事業者の皆様は、安全規則に基づいて、運行管理規程や帳票類を見直す必要があります。

◆運行管理者の業務の項目追加

特定自動運行に係わる項目が新設されたことから、安全規則第20条の「運行管理者の業務」の第1項第五号の二として、次の項目が新設追加されました。本追加事項に該当する場合は、特定自動運行保安員の乗務等が必要となります。

(運行管理者の業務)
第20条第1項第五号の二
特定自動運行事業用自動車による運送を行おうとする場合にあっては、第三条の二第1項の規定により特定自動運行事業用自動車に特定自動運行保安員を乗務させ、若しくはこれと同等の措置を行い、又は遠隔からその業務を行わせること。

◆運転者の遵守事項等の項目追加

安全規則第17条において「酒気を帯びた状態にあるときはその旨を貨物自動車運送事業者に申し出ること」など、運転者が遵守しなければならない9の事項が定められていましたが、新たに第三号の二として、次の項目が新設追加されました。
運転者等の教育の際には本項目を踏まえた教育が新たに必要となります。

(運転者)
第20条第1項第五号の二
特定自動運行事業用自動車による運送を行おうとする場合にあっては、第三条の二第1項の規定により特定自動運行事業用自動車に特定自動運行保安員を乗務させ、若しくはこれと同等の措置を行い、又は遠隔からその業務を行わせること。

◆業務後自動点呼

業務後自動点呼とは、国土交通省が定める要件を満たしたIT機器を用いて、事業者の営業所又は当該営業所の車庫において、当該営業所に所属する運転者等に対して行う業務後の点呼をいい、「ロボット点呼」と呼ばれることもあります。
 業務後自動点呼が実施できる施設・環境要件としては、なりすまし、アルコール検知器の不正使用及び所定の場所以外での業務後自動点呼が実施されることを防止するため、業務後自動点呼実施場所の天井等に監視カメラを備え、運行管理者等が、業務後自動点呼を受ける運転者等の全身を常時又は業務後自動点呼実施後に、明瞭に確認することとされています。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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