事業用トラックの交通事故の特徴の一つは追突事故が多いということです。実際、事業用トラックの死傷事故に占める追突の割合は、一般道路では5割近く、高速道路ではほぼ6割を占め半数を超えています。そこで今回は、高速道路における事業用トラックの追突事故の実態や要因とその背景および対策をまとめました。

◆事業用トラックの高速道路の死傷事故のほぼ6割は追突事故

令和4年の高速道路における事業用トラックの死傷事故件数は1,055件で、そのうち「駐・停車中の車への追突」が401件(38.0%)、「進行中の車への追突」230件(21.8%)、両方を合わせると追突が631件(59.8%)となり、ほぼ6割を占めています(下図参照)。 この傾向は、ここ数年変わっておらず、故障等で路肩に停止していた車両への追突や渋滞で停止していた車両への追突などの重大事故が多発しており、追突事故防止対策がトラック運送事業の大きな課題となっています。

【高速道路における事故類型別死傷事故件数(令和4年)】

◆追突事故の原因と背景

追突の原因としては、漫然運転や脇見運転などがあげられていますが、その背景には長時間の運転業務による疲労の蓄積があると指摘されています。疲労が蓄積されると、集中力や注意力が低下して、見落としや見誤りが増えます。また、運転動作も緩慢となって的確なハンドル操作やブレーキ操作もできなくなります。こうした疲労の蓄積が改善されないまま運転業務を継続すれば、いわゆる過労状態となり、最悪の場合は居眠り運転に陥ります。したがって、「車間距離を十分にとる」などの指導だけでは十分ではなく、ドライバーの拘束時間や休息期間などの労働環境にまで踏み込んだ対策が必要とされています。

◆令和6年4月1日施行改正改善基準告示の遵守

過労などのドライバーの健康状態に起因する追突等の事故を防止する対策の一環として、 「貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が改正され、令和6年4月1日に施行されます。トラック運送事業の皆さまは、改正改善基準告示の内容に沿って勤務時間や乗務時間、乗務割等の見直しが図られていると思いますが、今後はそれをいかに適正かつ確実に実施していくかが問われます。特に高速道路を走行するドライバーは、宿泊を伴う長時間の運行が多く、体調を崩したり、過労状態に陥りやすくなりますから、拘束時間や休憩時間、運転時間等について、改正改善基準告示を遵守した運行管理を行うことが求められます。

◆ドライバーへの指導のポイント

追突事故を防止するためのドライバーへの指導内容として、全日本トラック協会では、次の事項をとりあげています。

<運転中の自己管理>
・眠気や疲れを感じたら、いったん休憩する。
・高速道に乗ったら1時間以内に休憩する。
・渋滞等で遅延が生じても、焦らずに管理者に報告する。

<運転時の注意事項>
・走行中は、伝票・ルートマップを手にしない。
・走行中は、スマホ等を手にとらない。
・ペットボトルやタバコなど、ものが倒れたり落ちたりしないようにする。

上記を参考にして、日常の指導を進めていくことが大切です。

(参考:公益社団法人全日本トラック協会「トラック追突事故防止マニュアル研修資料」P.33,P.36より)

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記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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