近年、大型車(車両総重量8トン以上)の車輪脱落事故の発生件数は増加傾向にあります。そのため国土交通省は、車輪脱落事故防止対策として、令和5年10月1日より、大型車の車輪脱落事故を起こした自動車運送事業者及び整備管理者に対する行政処分を導入しました。そこで今回は、大型車の車輪脱落事故の発生状況や行政処分の内容等をご紹介します。

◆大型車の車輪脱落事故発生状況

○令和4年度における大型車の車輪脱落事故の発生件数は、140件で、前年より7件増加しました。
 月別の発生件数をみると、令和4年11月~令和5年2月に93件(66.4%)と冬期に集中しています。特に、12月は39件と突出して多くなっています(図1)。
 ・車輪脱着作業から車輪脱落事故発生までの期間をみると、車輪脱着作業後1か月以内に、車輪脱落事故が発生したものが74件(52.8%)と半数を超えており、2か月以内では107件(76.4%) で8割近くを占めています(図2)
 ・脱落した車輪位置は左後輪が94%で大半を占めています。

○国土交通省が令和4年2月に設置した「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」の中間とりまとめでは、事故の主な原因として、

 ・タイヤ脱着作業時のワッシャー付きホイール・ナットの点検、清掃や各部位への潤滑剤の塗布、ホイール・ナットが円滑に回るかの確認が不十分である
 ・適切なタイヤ脱着作業やタイヤ脱着作業後の増し締めが実施れていない
などが報告されています。

◆大型車の車輪脱落事故に対する行政処分

〇車輪脱落事故を惹起した自動車運送事業者に対する車両の使用停止処分
 ・ホイール・ボルトの折損、ホイール・ナットの脱落またはそれらに類する事象に起因する車輪脱落事故が発生したもの
 ◆初違反 20日車
 ◆再違反 40日車

※車輪が脱落した要因に事業者の関与が無く、事業者による点検整備が確実に行われていることの証明があった場合を除きます。
(出典:「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」)

〇一定期間に複数回の車輪脱落事故を惹起した自動車運送事業者に対し整備管理者の解任命令
 ・大型車のホイール・ボルト折損等による車輪脱落事故が発生し、かつ、過去3年以内に同事故が発生していた場合
(出典:「道路運送車両法の一部を改正する法律等の施行に伴う整備管理者制度の運用について」)
※整備管理者を解任された者は、2年間は整備管理者として選任できません。(道路運送車両法施行規則第33条第2項)

◆大型車の車輪脱落事故防止対策

大型車の車輪脱落事故を防止するために、事業者の皆さまは、特に次の事項の指導に努めましょう。
適正なタイヤ交換の実施
タイヤ交換の取扱説明書等に基づいて、ホイール・ボルトやナットのサビや損傷等をしっかり点検し、必要に応じて清掃や交換しましょう。
タイヤ交換後の増し締め
タイヤ交換をしてから、50~100km走行後にトルクレンチによる増し締めを確実に行いましょう。
日常点検での確認
運行前の毎回の日常点検では、特に脱落が多い左後輪を中心に、ボルトやナットの状態を点検しましょう。

図2 主な事故類型別の死傷事故件数(令和4年)

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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