2024年6月にデジタル田園都市国家構想交付金の中の「地方創生拠点整備タイプ」の採択事例集が発表になりました。デジタル田園都市国家構想交付金は企業版ふるさと納税における「併用可能な補助金交付金」の一つであり、デジタル田園都市国家構想交付金を活用する自治体において、自治体負担分を減らすことができるため、自治体が企業寄附を求めるプロジェクトとして企業へ働きかけを行っています。併用可能な補助金交付金についての説明はこちらから。

デジタル田園都市国家構想交付金の中でも比較的予算規模が大きく、活用が進んでいるものの中に「地方創生拠点整備タイプ」があります。

地方創生拠点整備タイプとは

デジタル田園都市国家構想交付金の中の「地方創生拠点整備タイプ」を一言で説明すると「観光や農林水産業の振興等の地方創生に資する拠点施設の整備などを支援する交付金」です。内閣府の資料でも概要のところには「道の駅に隣接した観光拠点」や「子育て支援施設」、「スタートアップ支援拠点」などが例に挙げられています。

地方創生拠点タイプは、デジタル田園都市国家構想交付金に位置付けられる以前は「地方創生拠点整備交付金【当初・補正】」と呼ばれていた交付金で、当初は令和2年創設で、補正は平成28補正創設で自治体の皆様は広く活用されています。

地方創生拠点整備タイプの活用状況

47都道府県のうち46都道府県が地方創生拠点整備タイプを活用しています。この交付金を使っていない都道府県は沖縄県です。市町村は、1741の中では886市町村(50.9%)が活用しています。地方創生拠点整備タイプの市町村レベルで活用率が最も高いのは、熊本県で88.9%の市町村が活用しています。

活用率の高い都道府県ランキングベスト5

熊本県 88.9%
富山県 86.7%
福井県 76.5%
長野県 72.7%
栃木県 72.0%

地方創生拠点整備タイプの予算額

デジタル田園都市国家構想交付金の中で、地方創生拠点整備タイプの予算は、令和5年当初が70億円、令和6年当初は少し減って50億円です。デジタル田園都市国家構想交付金全体の当初予算が、令和5年、令和6年とも1,000億円なので、少し割り当ては減っています。

同じく地方創生拠点整備タイプの補正予算は令和4年補正が400億円でしたが、300億円に減っています。補正予算で地方創生拠点整備タイプが大幅に減らされた背景には、地域産業構造転換インフラ整備推進タイプと呼ばれる「半導体産業」への支援や大阪万博に関連した地方創生の取り組みへ新たに予算が配分されているためと考えられます。

上記の予算額でも違った地方創生拠点整備タイプ【当初・補正】ですが、予算額以外にも違いがあります。当初予算では原則3年(最長5年)の事業が対象ですが、補正予算は単年度事業が対象になるため、名称が同じでも考え方や使い方が異なります。また、当初予算分は2023~27年度(デジ田総合戦略の期間)を通じて1事業に限定されます。補正予算分は申請に上限はありません。

地方創生拠点整備タイプ【当初・補正】の補助上限額や補助率は、

都道府県15億円
中枢中核都市10億円
市区町村5億円
補助率:1/2

同一です。

地方創生拠点整備タイプは何が対象なのか

内閣府の資料上は

とされています。内閣府の制度紹介ページはこちら

実際に対象となる施設整備事例として、以下が挙げられています。非常に幅広く使えることが分かります。

効果促進事業(ハード事業)の例

・外構工事(駐車場、植栽、看板、スロープデッキ設備、オートキャンプサイト設備 等)
・解体・撤去工事(既存施設、トイレ、車庫、倉庫 等)
・設備整備(屋内遊具、防音施設整備、Webカメラ設置、暖房設備工事、衛生器具設備整備、デジタル設備※ 等)
・用地造成(多目的広場・スポーツ広場、スポーツグラウンド、スケートボードパーク、体験農園 等)

※「デジタル設備」の例:Wi-Fi工事、キャッシュレス決済設備、ICT機器設備、VR体験エリア設備、デジタルサイネージ、動作解析が可能なAIカメラ

効果促進事業(ソフト事業)の例

・委託業務(AIを活用した自動音声翻訳アプリの開発、生産販売管理システムの構築、ルート調査・マップ作成業務 等)
・備品購入費(地方債の対象とならない経費)

設備整備・用地造成の特徴的な事例

・ロケット射場及び滑走路(世界中のロケット製造企業等が管内でロケット等の実験・打上を実施するために事務所や工場等の拠点をつくることにより、ロケットの開発・製造・営業等の雇用を創出する。) 【設備整備・用地造成】

・夜間照明(Jリーグスタジアムに夜間照明を設置することで、来訪者の滞在時間の延長、観光消費単価の増加が見込まれ、交流人口の増加、地域経済活性化につながる。) 【設備整備】

・グラウンド整備(プロスポーツに対応したグラウンドの新規造成を行い、プロチームのキャンプ目当ての観光客の呼び込みを図るなど、稼ぐ力の強いスポーツ観光を強化する。) 【用地造成】

企業と自治体の連携の一つの選択肢として

企業が地域や自治体と連携していくうえで、デジタル田園都市国家構想交付金の利用は一つの選択肢として有効です。詳細は内閣府の企業版ふるさと納税ポータルやデジタル田園都市国家構想もご参考にしてください。

■企業版ふるさと納税ポータル
(リンクURL:https://www.chisou.go.jp/sousei/index.html

■デジタル田園都市国家構想
(リンクURL:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/index.html

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執筆者情報

著者 株式会社カルティブ 代表取締役 池田 清

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