警察庁の交通統計によると、令和5年における事業用トラック(軽貨物を除く)の飲酒運転による事故件数(人身事故)は23件で、前年の6件を大幅に上回り、約3.8倍の増加となりました。公益社団法人全日本トラック協会では、飲酒運転増加に歯止めをかけ、より一層の防止の徹底を図るため、リーフレット「飲酒運転根絶に向けたトラック運送業界の取り組みの強化について」を公表しました。今回は、それを参照しつつ、飲酒運転の実態と対策についてご紹介します。

◆飲酒運転事故の発生状況

図1は、事業用トラックの過去5年間の飲酒運転による事故件数の推移を示したものです。ここ数年、減少傾向にあった飲酒運転の事故件数が、令和5年は急増していることがわかります。
 一方、国土交通省の調査によると、令和5年の物損事故も含めた飲酒運転事故件数は35件で、このうち大型車の占める割合は70%を超えています(図2)。また、点呼が行われなかったケースが15件(約43%)、出庫点呼後の運行中に飲酒したケースが14件(40%)であったことがわかりました。

◆飲酒運転事故の防止対策

点呼が確実に実施できる体制を整える

点呼が行われなかったケースをみると、出発時間帯に運行管理者等の点呼執行者が不在であったケースが多くみられます。点呼は誰が行ってもよいというわけではありません。運行管理者または補助者に限られますので、どのような時間帯であれ、トラックの出発時刻には点呼執行者が存在しているという体制を整える必要があります。

業務途中と業務終了後のアルコール検知器によるチェックを厳格に行う

業務点呼後に飲酒するというケースとしては、途中で缶ビール等を購入し、飲みながら運行したり、車内等での食事時に食べながら飲むなどのケースがみられます。運行途中の飲酒は、運行管理者等が直接は把握できないため効果的な防止策を実施するのは難しい面もありますが、運行途中での飲酒厳禁を点呼等で繰り返し強調すると同時に、業務途中点呼と業務終了後点呼でのアルコール検知器によるチェックを厳格に実施するようにします。それによって業務途中の飲酒の有無が把握できることもありますし、運転者に対して厳しい姿勢を示すことにもつながり、業務途中の飲酒を抑制する効果も期待できます。

なりすましによるアルコール検知器不正使用に注意する

二日酔い状態で出勤し、そのままアルコール検知器によるチェックを行うと「酒気帯び」という結果か出るおそれがある場合、酒気を帯びていない別のドライバーに、自分になり代わってアルコール検知器によるチェックを受けてもらうという、いわゆる「なりすまし」のチェックが行われる可能性もあります。
こうした行為は重大な違反行為ですが、万一、営業所でこのようなことが容認されていた場合には、道路交通法における「酒気帯び運転の下命・容認」が適用されて、営業所長や運行管理者等が刑事・行政処分を受ける可能性があります。
したがって、事業者や運行管理者の皆様には、こうした行為を決して見逃さないよう日常の管理を徹底していくことが求められます。

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記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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