運転に重大な影響を及ぼす心臓疾患・大血管疾患の早期発見や発症予防を図るために、事業者が知っておくべき内容や取組みの際の手順等を具体的に示した「自動車運送事業者における心臓疾患・大血管疾患対策ガイドライン」(国土交通省自動車局・事業用自動車健康起因事故対策協議会)が策定され、2019年7月5日に公表されました。事業者はこのガイドラインを活用した取組みが求められます。
そこで今回は、ガイドラインの概要をご紹介します。(※本ニュースは当ガイドラインの内容を当社にて編集したものです。)

 

1 心臓疾患・大血管疾患とは

心臓疾患と大血管疾患

心臓疾患にはさまざまなものがありますが、交通事故との関連が特に高い心臓疾患としては、「冠動脈疾患」(心筋梗塞・狭心症)と「不整脈疾患」、一時的に意識を失って倒れる「失神発作」があります。
大血管疾患の主な疾患は「大動脈瘤、大動脈解離」ですが、そのほかに「静脈血栓塞栓症」(エコノミークラス症候群)があります。

心臓疾患・大血管疾患の危険性

心臓疾患、大血管疾患の問題点は、予期できない状況で突発的に発症することが多いこと、さらに、突然死に至ることが多いことにあります。
右図は「運転者の疾病に起因し、運転者が死亡した事故報告の疾患別内訳」(平成25~29年)を示したものですが「心臓疾患」が51%、 「大動脈瘤及び解離」が14%を占めています。

2 早期発見と発症予防のための事業者の実施事項

「疾患を見逃さないために注意すべき症状」について運転者に周知

「疾患を見逃さないために注意すべき症状」について運転者に周知するとともに、症状について日ごろから点呼等で確認し、医療機関の受診が必要な症状が現れた場合は、受診を促します。
※重篤な心臓疾患、大血管疾患を見逃さない ために注意すべき症状は、胸痛、めまい・失神、動悸、呼吸困難であり、これらは4大症状といえます。

定期健康診断結果による事後措置

定期健康診断の結果および所見について、要精密検査や危険因子に関し一定の目安に該当した場合には医療機関への受診を促します。

スクリーニング検査の実施

定期健康診断に追加して、スクリーニング検査(オプション等)を受診する対象者を選定します。スクリーニング検査の結果で受診が必要な場合は医療機関への受診を促します。

スクリーニング検査の実施

運転者に対して、生活習慣の改善を促す社内教育や施策を実施します。健康保険組合や全国健康保健協会等と協力して特定保健指導を実施します。

3 生活習慣の改善のための啓発

心臓疾患、大血管疾患の予防のためには、生活習慣の改善を行うことが重要です。事業者は、下記に掲げた改善のポイントについて周知徹底を図り、運転者に生活習慣の改善を促しましょう。

●喫煙者であれば禁煙をしましょう。(喫煙は発がん作用があるだけでなく、全身の血管を収縮させ、大動脈、心血管疾患の発症リスクを高めます。)

●食事では、高血圧の原因になる塩分の高い食事、肥満、脂質異常症や糖尿病等の原因となる脂肪分の高い食事やカロリーの高い食事は控えましょう。加えて、食べ過ぎに注意しましょう。

●塩分を控え、一日の塩分摂取量を6g以下にしましょう。ラーメン等の麵類の汁は残しましょう。野菜や果物には血圧値の低下を助けるカリウムが含まれているので、積極的に食べるようにしましょう。

●過度の飲酒は控えましょう。

●肥満は、高血圧、糖尿病の原因となるだけでなく、それ自体が心臓疾患、大血管疾患を発症する原因にもなるので、体重管理をしましょう。肥満予防と体調管理のために、体力に合った適度な運動を続けるようにしましょう。毎日30分程度の汗をかく程度の運動がよいでしょう。男性では1日9,000歩、女性では8,000歩を目標としましょう。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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