トラック運送業の健全な発達及び運転者不足により物流が滞ることのないよう、運転者の労働条件の改善等を図るため、貨物自動車運送事業法が一部改正され(「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」)、2018年12月14日に公布されましたが、改正事項のうちの「事業者が遵守すべき事項の明確化関係」と「規制の適正化関係」が、2019年11月1日に施行されます。
そこで今回は、改正貨物自動車運送事業法の施行状況と「事業者が遵守すべき事項の明確化関係」 の改正内容の概要について紹介します。

 

1 改正貨物自動車運送事業法の施行状況

改正の主な項目と施行状況

改正の主な項目と施行状況は、次のとおりです。

(1)荷主対策の深度化関係(2019/7/1施行)
(2)事業者が遵守すべき事項の明確化関係(2019/11/1施行)
(3)規制の適正化関係(2019/11/1施行)
(4)標準的な運賃の告示制度の導入(未定:2019/8末現在)の公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行)

2 事業者が遵守すべき事項の明確化関係

「事業者が遵守すべき事項の明確化関係」については、次の2項目があります。

①輸送の安全に係る義務の明確化
・事業用自動車の定期的な点検・整備の実施 等

②事業の適確な遂行のための遵守義務の新設
・車庫の整備・管理
・健康保険法等により納付義務を負う保険料等の納付

事業用自動車の定期的な点検・整備の実施

貨物自動車運送事業法第17条(輸送の安全)の第1項が改正され、第2号として、トラック運送事業者に対して定期的な点検・整備を実施することが義務づけられました。

(輸送の安全)
第17条第1項 一般貨物自動車運送事業者は、次に掲げる事項に関し国土交通省令で定める基準を遵守しなければならない。
(一 省略)
二 事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な事項

車庫の整備・管理

自動車の車庫については、下記のように貨物自動車運送事業輸送安全規則が改正され、原則として営業所に併設すること、それが困難な場合には営業所から自動車車庫までの距離の範囲が示されました。

※当該自動車の使用の本拠の位置との間の距離が、2Km(法第13条第2項 の運送事業用自動車である自動車にあっては、国土交通大臣が運送事業(同条第1項 の自動車運送事業又は第二種貨物利用運送事業をいう。)に関し土地の利用状況等を勘案して定める地域に当該自動車の使用の本拠の位置が在るときは、当該地域につき国土交通大臣が定める距離)を超えないものであること。

健康保険法等により納付義務を負う保険料等の納付

貨物自動車運送事業の改正により、第24条の4(事業の適確な遂行)が新設され、トラック運送事業者は「健康保険法等の定めるところにより納付義務を負う保険料等の納付その他の事業の適正な運営」について、国土交通省令の定める基準を遵守しなければならないことが定められました。
国土交通省令の定める基準とは、「健康保険法等の定めるところにより納付義務を負う保険料等を納付していること」(貨物自動車運送事業輸送安全規則第14条第2号・一部表現変更)のことです。

つまり、保険料等を納付しているかどうかが、事業が適確に遂行されているかどうかの判断材料になるということです。万一、それが遵守されていない場合には、トラック運送事業者に対して、その是正のために必要な措置を講ずべきことを命ずることができるとされています。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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