このほど、2009年~2018年の10年間における「自然発車」(「運転者の運転行為以外の原因で車両等が動き出したことによって発生した交通事故」とされ、交通事故統計原票で定義されています。)の分析結果が、公益財団法人交通事故総合分析センターより公表されました(イタルダインフォメーション交通事故分析レポートNo.134)。自然発車による事故のほぼ半数は貨物車によって引き起こされています。
そこで今回は、自然発車による事故の分析結果をご紹介します。

 

自然発車による事故の主な特徴

死亡事故率が高い

2009年~2018年の10年間に発生した自然発車による人身事故は2,352件で、そのうち死亡事故は162件です。件数そのものは多くはありませんが、特徴的なのは死亡事故率(死亡事故件数÷人身事故件数)です。
自然発車では約7%となりますが、人身事故全体での死亡事故率は1%に満たない程度ですから、自然発車による事故は死亡事故につながるリスクがかなり高いといえます。

死者の8割超は当該車両の運転者

自然発車の事故による死者をみると、当該車両の運転者以外の歩行者等の第三者は2割に満たず、死者の8割超は当該車両の運転者自身ということになります。これも自然発車による事故の大きな特徴の一つです。

貨物車は乗用車より死亡事故が多い

自然発車による人身事故を乗用車と貨物車で比較すると乗用車は1,192件、貨物車は1,125件で乗用車のほうがやや多い程度ですが、死亡事故では乗用車62件に対し、貨物車は91件で、乗用車の約1.5倍となっています。

貨物車の死亡事故では中型自動車と軽自動車が多い

貨物車の自然発車による死亡事故を貨物車の車両区分別にみると、中型自動車と軽自動車が多くなっています(図2)。車両区分別の死亡事故件数の分布をみると、車両重量との関係は特にみられないようです。

事故要因は運転者の操作上の誤りが大半

自然発車の事故要因では、ブレーキのかけ忘れなどの操作上の誤りが9割超を占めており、整備不良や道路環境によるものはわずかです。大半は運転者のミスによるものといえます。

勾配3%未満の場所でも死亡事故は発生している

死亡事故の60%は、勾配3%以上の場所で発生していますが、一見すると傾斜していることがよくわからない勾配3%未満の場所でも死亡事故が発生しているので、注意が必要です。

自然発車による事故を防止するために

自然発車による事故を防止するために、特に次の点をドライバーに指導しましょう。

◆一見すると平坦な場所のように見えても、実際には傾斜していることがありますから、駐車するときは常に「この場所は傾斜しているかもしれない」と考えましょう。

◆駐車時は確実にパーキングブレーキを使用し、車を離れるときは短時間であっても必ずエンジンを切りましょう。エンジンをかけたまま車両を離れると、振動で車両が動き出すおそれがあります。

◆駐車時は、たとえ短時間であったとしてもタイヤに「輪止め」をする習慣をつけましょう。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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