事例紹介

 幼稚園の年長さんになったB君は、いつも元気いっぱい、走り回って遊ぶのが大好きです。B君の担任の先生はこの4月に園に来たばかりです。ある夏の暑い日、朝からお日様はカンカン照りでした。午前中はプールでお友達と思いっきり遊び、B君はお昼ご飯を食べた後もすぐに園庭に出て遊具で遊んでいました。しばらく経ってから、急にB君が元気なさそうに先生のところに来て、「頭がガンガンする」と訴えてきました。心配になった先生が病院に連れていくと、熱中症と診断されました。
担任の先生は、B君にはこまめに水分をとらせるよう試みていましたが、なかなか飲んでくれず、また日頃からご飯も好き嫌いが多かったと打ち明けました。

子どもが熱中症になりやすい理由は?

夏の暑さが続き、炎天下で子どもが遊ぶ機会が多くなると、熱中症に注意が必要です。特に子どもは下記の理由から、大人よりも熱中症になりやすいと言われています。

・体温調節機能が未発達であるため、大人より暑さに弱い
・大人よりも身長が低いため、地面からの照り返しの影響を受けやすい
・自分で自らの体調の変化に気づいたり、伝えることが出来ない

このような子どもの特性から、周りの大人が常に子どもの体調変化に気を配り、水分をこまめにとらせる必要があります。
B君の場合、先生が水分をとらせようとしていたにも関わらず、なかなか飲んでくれませんでした。それはなぜでしょうか?
B君には、水分がとれない「ある理由」があったのかもしれません。

偏食の意外な理由、「感覚過敏」とは?

偏食と聞くと、ただの好き嫌いと思われる方も少なくないでしょう。しかしながら、発達に偏りのあるお子様には、「感覚過敏」といって感覚の使い方のバランスが悪く、口の中で過剰に反応してしまうことがあります。食事場面で見られる「感覚過敏」のお子様の例を挙げてみます。

・冷たい飲み物を嫌がる
・牛乳の匂いに過剰に反応してしまう
・触感(例えば、ぬるっとした刺身、チクチクした衣、しゃきしゃきした野菜)が嫌で食べられない

このように水分の温度や匂い、舌触りや歯触りなどが原因となり、偏食となっている可能性があります。

「感覚過敏」による偏食の対応方法

B君の場合も、日頃から偏食で水分をとることも嫌がる傾向がありました。
担任の先生も、B君の偏食には気付いていたものの、感覚の問題は目に見えないため気付かれにくく、ただの「好き嫌い」と考えていたのかもしれません。感覚過敏が原因の場合、子どもによって何がどのように感じるかは、個人によって差があります。冷たい飲み物を痛いと感じる子もいれば、苦手なものを口にすると吐き気がするほど気持ち悪くなる子もいます。
このため、下記に気をつけて無理強いせず、まずは子ども自身が困っていることを理解してあげましょう。

・本人が受け入れられる感触、温度、匂いの範囲を探す
初めて目にする食べ物を食べさせようとすると、どんな食感か分からず、防衛反応として怖がってしまいます。
・子どもが受け入れられる感覚から取り組む
一度経験したことのある食べ物であれば、「大丈夫」だという安心感が得られます。
・食べ物や飲み物ではなく、コップの形状も工夫する
口があたる食具にも気を付けてみましょう。コップでは飲めないけどストローなら飲めることもあります。

偏食の原因は、好き嫌いではなく「感覚過敏」が原因?
無理強いせずに、まずは子どもが受け入れられる食べ物を探してあげよう!

執筆者情報

執筆:株式会社東京リハビリテーションサービス 
作業療法士・公認心理師 竹中 佐江子

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