国土交通省は2020年7月6日、運輸事業者が防災体制の構築と実践を進める際に参考とすべき考え方をまとめた「運輸防災マネジメント指針-自然災害への対応に関する運輸安全マネジメント-」(以下、指針といいます。)を策定し、公表しました。
そこで今回は、この指針の概要をご紹介します。

 

運輸防災マネジメント指針の概要

1 指針策定の背景と目的

自然災害の頻発化・激甚化は輸送の安全の大きな脅威となっており、ますます防災の重要性が増していますが、それに加えて、運輸事業は国民生活・経済を支える重要インフラであり、災害時も事業継続が必要です。
この指針は、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクトとりまとめ(令和2年7月6日)」の「5. 交通・物流の機能確保のための事前対策」の中の「交通運輸事業者の防災マネジメントの推進」を実施するためのものであり、運輸事業者の防災意識を一層向上させ、全社的な自然災害対応への取組(防災+事業継続)を促進していくことを目的としています。

2 指針の主な要点

防災力向上+事業継続を目指す取組

○自然災害にどう対峙するかという危機管理に加え、事業継続に要する経営資源の配分、優先事業の絞り込みなどの経営判断を伴う取組なので、経営トップが率先して全社の取組にする必要があります。

平時の「備え」と迅速な初動

○被災の直前から直後の対応は危機管理そのものなので、トップダウンで対応する体制が必要です。

○平時の「備え」が初動の成否を握りますから、災害は必ず来ると認識 して、ハザードマップを参考にするなどして自社の拠点等が被災した場合の代替措置の検討も含め、平時から準備することが大切です。

「備え」と初動

○被災時には、地方自治体をはじめ国の行政機関、関係事業者などのさまざまな関係者が対応するため、これらの関係者との「顔の見える関係」の構築が防災力を高めます。

○実践的な訓練の定期的実施と振り返りを行います。

○発災時の即応能力を向上させるためには、社員には基本理念と基本動作を習得させ、応用力を訓練及びレビューで鍛えるよう取組みます。

3 「防災マネジメント」取組みの評価

国土交通省は、事業者の指針に基づいた「防災マネジメント」の取組状況を評価します。
評価とは、経営トップを含む経営陣に対して直接インタビューを行うなどして、取組の優れている点は評価し、改善の余地がある場合は助言をするというものです。これにより、より安全性を向上させることを目的としています。
(国土交通省「運輸防災マネジメント指針の意義と要点」より)

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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