陸上貨物運送事業の死傷災害は、荷役作業時が全体の約7割を占めていますが、その中で特に荷台からの転落が多いという特徴があります。厚生労働省と独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所において、トラック荷台への昇降による転落事故を防止するための対策がまとめられ公表されましたので、今回はその内容をご紹介します。

 

転落事故の特徴

荷台への昇降時の転落が最も多い

右図は、2015年に発生した陸上貨物運送事業の休業4日以上の労働災害の中から、トラック荷台からの転落等による労働災害データを対象として、「独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所」が分析した結果を示したものです。これによると、トラック荷台からの転落事故は、荷台への昇降時が最も多く全体の40%を占めています。

荷台から降りるときが全体の4分の1を占める

荷台からの転落事故の内容みると、「荷台から降りる時」が最も多く、27.0%を占めており、全体の4分の1を占めています。

その他の特徴

右図からでは読み取れない、その他の主な特徴をあげてみます。
・「荷物上での作業など」では、「荷の固定・固縛中」が多く発生しています。
・「天候の影響など」では、その大半は「雨・雪・氷(水分や凍結)の影響」であり、滑りやすさが原因と考えられます。

転落事故を防止するためのポイント

トラック荷台からの転落を防止するために、作業者に対して特に次の点を指導しましょう。

安全な作業を行うための基本事項

・保護帽を正しく着用する。
・安全靴の溝が摩耗するなどして、滑りやすくなっていないかチェックする。
・荷台への昇降は、必ず昇降設備を使用する。
・荷や荷台の上で作業を行う場合は、背を荷台外側に向けないようにするとともに、後ずさりをしない。
・荷台などからの飛び降りは絶対にしない。

荷台への昇降時の転落事故防止のポイント

・バン型車のリヤ部では、リヤドアフレームに装備したグリップを持ち、足元を見ながらリヤドア下部のリヤバンパーまたはステップに片足をかけて荷台に上がる。降りる時もグリップを持ったままステップに足をかける順序で、荷台内側を正面に見て後ろ向きで降りる。
・バン型車のサイド部では、ドアフレームに装備したグリップを持ち、足元を見ながらサイドステップに片足をかけて荷台に上がる。降りる時は、上がる時と逆の順序で移動する。
・平ボディ車のあおりなどでは、あおりをおろした時にはステップだけでなくグリップもないので、あおり内側回転ステップの装備、持ち運び可能な荷台用ステップなどを使用する。

事業者の皆様へ

●荷台昇降時の安全を確保するために、昇降設備や滑り止めなどの装備を整えましょう。

●作業手順書・マニュアル類が適正がどうかを作業者視点で見直し、構内などで演習してみましょう。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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