令和元年度の国土交通省による「貨物自動車運送事業の行政処分等の概要」をみると、輸送の安全確保関係では、「指導監督違反」が最も多く、全体の27.1%を占めています。
ここでいう「指導監督」とは、貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項に規定されている指導監督であり、具体的には「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(以下、指導監督の指針といいます。)に基づいた指導監督をいいます。
そこで今回は、指導監督の指針についてご紹介します。

 

1 指導監督の指針とは

事業者には、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転に関する技能及び知識を運転者に習得させるために、指導監督の指針に基づいた運転者指導を実施することが義務づけられています。
指導・監督の指針に基づく運転者指導等が、事業者において適正に実施されているかどうかについては、監査等で厳しくチェックされますので、しっかりとした実施計画を立て、確実に実施していく必要があります。

2 指導監督の対象運転者の区分と指導内容

指導監督の指針では、指導監督の対象運転者は「特定運転者」と「一般運転者」に区分され、「特定運転者」については、「初任運転者」、「事故惹起運転者」、「高齢運転者」の3つに区分され、指導内容も異なっています。

1.特定運転者

(1)初任運転者

指導内容は、右記の一般運転者と同じ項目を座学にて15時間以上、事業用自動車を使用した添乗指導などの実技指導を20時間以上実施することとされています。

(2) 事故惹起運転者

指導内容は「交通事故の事例の分析に基づく再発防止対策」などの座学を6時間以上、事業用自動車を使用した添乗指導などの実技指導を20時間以上実施することとされています。

3) 高齢運転者(65歳以上)

高齢運転者については、適性診断の結果を踏まえ、個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた事業用自動車の安全な運転方法等について運転者が自ら考えるよう指導することとされています。

2.一般運転者

一般運転者に対する指導監督の内容は、次のように定められています。

① 事業用自動車を運転する場合の心構え
② 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
③ 事業用自動車の構造上の特性
④ 貨物の正しい積載方法
⑤ 過積載の危険性
⑥ 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑦ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑧ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑨ 運転者の運転適性に応じた安全運転
⑩ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
⑪ 健康管理の重要性
⑫ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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