令和2年10月30日に国土交通省より、「令和元年度大型車の車輪脱落事故発生状況」が公表されました。それによると、車輪脱落事故はここ数年増加傾向にあり、10月から2月に集中しています。
そこで今回は、令和元年の車輪脱落事故の発生状況や特徴と防止対策について紹介します。

 

大型車の車輪脱落事故発生状況と主な特徴

急増している車輪脱落事故

令和元年度における大型車(車両総重量8トン以上のトラック等)のホイール・ボルト折損等による車輪脱落事故発生件数は112件(うち人身事故4件)で、前年度に比べ31件も増加しています。過去5年間の発生状況をみても毎年増加しており、特に令和元年度は急増していることがわかります(図1)。

車輪脱落事故の主な特徴

●冬期(10月~2月)に集中しており、全体の約67%を占めています(図2)。

●車輪脱着作業後1ヶ月以内に発生したものが68件で、全体の約61%を占めています。

●車輪脱落事故を起こした車両の車籍をみると、関東以北(北陸信越、東北、北海道) での事故が93件で、全体の83%を占めています。

●車輪脱落箇所については、左後輪が96%と大半を占めています。

●車輪脱輪事故の発生推定原因としては、不適切なタイヤ交換作業、交換後の保守管理の不備が主な要因となっていると考えられます。
(出典:国土交通省 「令和元年度大型車の車輪脱落事故発生状況」)

車輪脱落事故の防止対策

① 整備管理者は、適切なタイヤ交換作業の実施を確保するため、次の事項を徹底するようにします。
• 日程及び時間に余裕を持った計画的なタイヤ交換作業の実施。
• 自社でタイヤ交換作業を行う際は、正しい知識を有した者に実施させる。

② 運送事業者は、車輪脱落事故防止のための次の4つのポイントについて、社内の整備管理者、運転者及びタイヤ交換作業者に確実に実施させます。特に、脱落の多い左後輪については重点的に点検します。

1.ホイール・ナットの規定トルクでの確実な締付け
2.タイヤ交換後、50~100km走行後の増締めの実施
3.日常(運行前)点検における確認
4.ホイールに適合したボルト及びナットの使用

③ 整備管理者は、著しく錆びたホイール・ボルト、ナット、 ディスク・ホイールでは、適正な締付力が得られないため、タイヤ交換作業時に点検・清掃を行っても錆が著しいディスク・ホイール、スムーズに回らないボルト、ナットは使用せず、交換します。特に、ホイール・ボルト、ナットが新品の状態から4年以上経過している車両は、重点的に確認するようにします。

④ 整備管理者は、増し締めをやむを得ず車載工具で行う場合の実施方法を作業者(運転者)に指導します。なお、整備管理者は、車載工具で増し締めを行った場合は、必ず帰庫時にトルクレンチを使用して規定のトルクで締め付けるようにします。
(出典:国土交通省 大型車の車輪脱落事故防止「令和2年度緊急対策」)

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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