令和元年度の国土交通省による「貨物自動車運送事業の行政処分等の概要」をみると、輸送の安全確保関係では、「指導監督違反」に次いで多いのが「点呼」であり、全体の23%、4分の1近くを占めています(2020年11月号参照)。
点呼は、管理者と運転者が直接顔を合わせる数少ない機会であり、点呼を確実、かつ、適正に実施していくことが、安全運行の確保にとってきわめて重要なポイントになります。そこで今回は、点呼の内容や方法についてご紹介します。

 

1 点呼の実施内容

トラック運送事業における点呼には、乗務開始前点呼、乗務終了後点呼、乗務の途中で行う中間点呼の3種類があります。

乗務開始前点呼(主な実施項目)

○酒気帯びの有無を確認する・酒気帯びの有無については、運転者の状態を目視等により確認する。
・運転者が所属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて確認する。

○疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転ができないおそれがないかどうかを確認する
・健康状態が悪いと声に兆候が出やすいので、必ず運転者に声を出させる。
・睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれがあるかどうかの判断は、運転者の申告の他、運転者の顔色、しぐさ、離し方も含めて普段の様子と違うところがないかどうか、などから総合的に判断する。
・睡眠不足についての運転者からの申告は、乗務開始前の点呼だけでなく、乗務開始後に眠気を感じた場合も含まれることに留意する。

○日常点検の実施結果にもとづき、整備管理者が自動車の運行の可否を決定したことを確認する。

○安全運行に関する必要な指示を伝達する

乗務終了後点呼(主な実施項目)

○酒気帯びの有無を確認する(乗務開始前点呼と同じ要領)

○車の状態や道路、運行の状況について報告を受ける

○他の運転者と交替した場合においては、交替運転者に通告した内容の報告を受ける

中間点呼(主な実施項目)

○酒気帯びの有無を確認する
・酒気帯びの有無の確認については、運転者に携行させたアルコール検知器又は自動車に設置したアルコール検知器を用いて確認し、その結果を報告させる。

○疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転ができないおそれがないかどうかを確認する。

2 点呼の実施方法

乗務開始前点呼と乗務終了後点呼は、原則として対面で行わなければなりません。ただし、運行上やむをえず対面での点呼が実施できない場合は、電話、その他の方法で点呼を行います。

運行上やむを得ない場合とは

「運行上やむを得ない場合」とは、遠隔地で乗務を開始又は終了するため、点呼を対面で出来ない場合をいいます。したがって、車庫と営業所が離れているとか、早朝・深夜等のため点呼を行う運行管理者等が営業所に出勤していない場合などは該当しません。また、「電話、その他の方法」とは、電話(携帯電話を含む)、業務用無線等、運転者と直接対話できる方法をいい、電子メールやファックスなど一方的な連絡方法は該当しません。

中間点呼とは

中間点呼とは、乗務開始前及び乗務終了後のいずれの点呼も対面で行うことができない場合に、乗務の途中において、少なくとも1回、電話その他の方法により行う点呼を言います。「電話、その他の方法」は上記と同様です。なお、走行中の中間点呼は、脇見などによる交通事故の要因となりますから認められていませんので、サービスエリア等の安全な場所で行う必要があります。

3 点呼の執行者

点呼は誰が行ってもよいというものではなく、選任された運行管理者または補助者が行わなければなりません。
ただし、補助者が点呼を行う場合でも、運行管理者は、全体の点呼の3分の1以上を実施しなければなりません。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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