冬期は、雪道対策が求められますが、特に留意したいのはスリップなどによる立ち往生です。車体の大きいトラックが立ち往生すれば、長時間の渋滞が発生し、運転者の心身に重大な負荷を与えるだけでなく、物流にも深刻な影響を及ぼします。

気象や道路状況の情報収集と伝達・指示

冬期は、気象情報(大雪や雪崩、暴風雪等に関する警報・注意報を含む。)や道路における降雪状況等を事前に把握し、点呼時等において、運行経路の道路情報、道路規制情報、気象情報に基づき、乗務員に適切な指示を行う必要があります。万一、運行経路において大雪警報が出されているなど、状況によっては、運行経路の変更等も検討する必要があるでしょう。なお、交通渋滞等を引き起こした運送事業者等には監査を行われ、講じた措置が不十分と判断されれば処分の対象となります。

立ち往生が発生しやすい車両

パンフレット「雪道での立ち往生に注意!」 (国土交通省令和3年2月)によれば、下記の車両は特に立ち往生が発生しやすい傾向があり、注意が必要とされています。

一軸駆動車
一軸駆動車は二軸駆動車に比べて駆動軸が空転しやすいためです。

空荷状態の車両
駆動軸に十分な荷重がかからず、発進性能が低下するためです。

連結車
トレーラ部分付近の積雪により走行抵抗が増大するためです。

年式の古い車両
トラクションコントロール(発進時等に駆動輪の回転を制御し空転を低減する装置)等の機能が搭載されていないためです。

フロント・けん引用フックの位置の確認

雪道で路肩に落輪して身動きがとれなくなった場合、周りにトラックがいるようであれば、牽引ロープで引っ張ってもらうことで脱出することができます。その際、「フロント・けん引用フック」の位置がわからないと、脱出が遅れ立ち往生してしまいますから、乗務する車両の「フロント・けん引用フック」の位置を必ず確認させるようにしましょう。

タイヤの溝の点検とタイヤチェーンの携行

タイヤの残り溝をチェックする
タイヤの溝がすり減っているとスリップする危険が非常に高まります。運行前に必ずタイヤの残り溝を点検します。※残り溝の深さがプラットホームに達していないタイヤは使用できませんから交換する必要があります。※残り溝の点検は整備管理者が行い、点検結果を運行管理者に報告するのが原則です。

タイヤチェーンの携行と早めの装着
近年は、ほとんど雪の降らない地域でも大雪に見舞われることがありますから、冬期は運行経路にかかわらずタイヤチェーンを装備しておくようにします。タイヤチェーンについては、次の点を確認しておきます。・タイヤのサイズにあったチェーンであるか・タイヤチェーンに損傷などがないか
※冬用タイヤを装着している場合でも、タイヤチェーンを装備しておきましょう。

タイヤチェーンの早めの装着
チェーン装着の指示が出されたときは当然ですが、指示が出されない場合でも、降雪や積雪路面に遭遇し、少しでも危険を感じたときは、早めに安全な場所(チェーン装着場など)でタイヤチェーンを装着しましょう。タイヤチェーンを装着する際、チェーンが緩んでいたり、ゴムバンドのフックへの掛け忘れなどがあると、チェーンの脱落やチェーンの摩耗・損傷の原因となることがありますから、チェーンの緩みやフックへのかけ忘れなどに十分注意しましょう。
※タイヤチェーンは駆動軸に装着します。※車庫などで乗務員一人で装着できるよう訓練しておきましょう。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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