2023年3月23日、国土交通省より、「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン ~輸送の安全性の更なる向上に向けて~」(以下、「ガイドライン」と言います。)改訂が行われたことが公表されました。前回のガイドライン改訂以降、6年ぶりの改訂となります。そこで今回は、改訂版ガイドラインの内容の一部についてご紹介します。
 事業者の皆様には、「安全方針」等の改訂に関わる事項についての確認、見直しが求められます。

「運輸事業者に期待される安全管理の取組」の改訂内容

◆改訂の趣旨

このガイドラインは、事業者が安全管理体制を構築・改善するにあたり、その効果を実効性のあるものとするため、次に掲げる考え方を踏まえて改訂されました。
① 頻発化・激甚化する自然災害への対応力向上を図ることを目的として運輸防災マネジメントの推進を強化するため、その重要性を強調するとともに必要な対応を明記する。
② 過去の評価から、多くの運輸事業者において「事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用」、「内部監査」、「マネジメントレビューと継続的改善」について、未だ改善の余地が大きいことが確認されたことから、さらなる普及・啓発に向けて円滑な取組の促進を図る参考手順等を追記する。

◆改訂の内容

下記のガイドライン 5.運輸事業者に期待される安全管理の取組の全14項目のうち、赤字(一部抜粋)の部分が、改訂により追記又は新設された事項です。

2.安全方針
(1 、略)
2 安全方針には、輸送の安全の確保を的確に図るために、少なくとも次に掲げる事項の趣旨を、盛り込むものとする。なお、各要員にその内容を理解させ、実践することができるよう、できるだけ簡明な内容とする。
① 関係法令等の遵守
② 安全最優先の原則
③ 安全管理体制の継続的改善等の実施
社員等及び事業施設の被害軽減の取組
⑤ 災害時の避難・救助・救護の原則
⑥ 発災後、安全確保の後の事業の復旧・継続
(以下、略)

8.重大な事故・自然災害等への対応
(1~2、4~5略)
 事業者は、重大な事故や自然災害等の発生時には、次に掲げるような措置を講じる。(①、略)
  ② 自然災害の発生時には、災害対策本部等を立ち上げ、自社の被害状況等を把握し、安全確保を前提として事業の復旧を図る。
 事業者は、自然災害への対応については、地方自治体、国の行政機関、事業者団体、他の事業者と定期的な防災訓練等の機会を通じ、日頃から連携強化を図る。
(注)自然災害への対応については、国土交通省大臣官房運輸安全監理官室が公表した冊子「運輸防災マネジメント指針」を参照

10.安全管理体制の構築・改善に必要な教育・訓練等
1 事業者は、安全管理体制の構築・改善の取組に直接従事する要員、即ち、経営トップ、安全統括管理者等、各部門の安全管理に従事する責任者及びその補助者等並びに安全管理体制に係る内部監査を担当する者に対して、運輸安全マネジメント制度の趣旨等の理解を深めるため、次に掲げる事項に関し必要な教育・訓練を計画的に実施し、その有効性、効果を把握し、必要に応じて、当該教育・訓練の内容等の見直し・改善を図る。また、事業者は、必要に応じて、親会社、グループ会社、協力会社、民間の専門機関等を活用して教育・訓練等を実施することもできる。
 ① 本ガイドラインの内容(運輸安全マネジメント制度の趣旨・ねらい、安全管理体制におけるPDCAサイクルの概念、運輸防災マネジメント等を含む。)
(以下、略)

ガイドライン改訂の都度、経営トップや安全統括管理者は、
 ・改訂内容をチェックする
 ・必要に応じ、現在の安全管理体制を見直す
・できるところからはじめていく
 ・わからないときは専門機関に相談してみる
など、積極的に実施していきましょう。
※ガイドラインの改訂内容の詳細については、国土交通省、または公益社団法人全日本トラック協会のホームページから閲覧できます

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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