2令和4年5月30日、厚生労働省より「令和3年労働災害発生状況の分析等」が公表されました。そこで今回は、その中から「陸上貨物運送事業の労働災害発生状況」の概要をご紹介します。

労働災害の特徴と防止策

令和3年の労働災害の発生状況の主な特徴

・死亡者数は95人、前年比で8人(9.2%)増加し、死傷者数は16,732人で、前年比で917人(5.8%)増加しました。
・事故の型別では、死亡者数は「交通事故(道路)」が37人で最も多く、全数に占める割合は38.9%となり、近年は減少傾向にありましたが、令和3年は増加しました(図1)。
・死傷者数は、荷役作業中等の「墜落・転落」が4,496人で最も多く、全数に占める割合は26.9%となっています。そのうち、「トラック」を起因物とするものは3,083人と68.6%を占めています(図2)。
・「動作の反動・無理な動作」は2,984人(前年比250人・9.1%増、)で17.8%、「転倒」は2,813人(前年比209人・8.0%増)で16.8%を占め、いずれも近年増加傾向にあります。
・死傷年千人率(1年間の労働者1,000人当たりに発生した死傷者数の割合)は、9.30(前年比0.36 ポイント増)で、全産業2.66 の3.5 倍となっています。

労働災害防止対策

荷役作業中の労働災害を防止するためには、「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に則した取組を周知し、指導することとされています。当該ガイドラインには、労働災害の型別に応じた対策が示されていますが、ここでは「墜落・転落による労働災害の防止対策」のなかの「荷役作業を行う労働者に遵守させる事項」についてご紹介します。

墜落・転落による労働災害の防止対策

荷役作業を行う労働者に次の事項を遵守させること。

①荷役作業を行う前に、貨物自動車周辺の床・地面の凹凸等を確認すること。また、資材等が置かれている場合には整理・整頓してから作業を行うこと。
②不安定な荷の上ではできる限り移動しないこと(一度地面に降りて移動すること。)。
③荷締め、 ラッピング、 ラベル貼り等の作業は、 荷や荷台の上で行わず、出来る限り地上から又は地上での作業とすること。
④安全帯を取り付ける設備がある場合は、安全帯を使用すること。
⑤墜落・転落の危険のある作業においては、 墜落時保護用の保護帽を着用すること。
⑥荷や荷台の上で作業を行う場合は、フォークリフトの運転者等から見える安全な立ち位置を確保すること。
⑦荷や荷台の上で作業を行う場合は、荷台端付近で背を荷台外側に向けないようにし、後ずさりしないこと。
⑧雨天時等滑りやすい状態で作業を行う場合には、耐滑性のある靴(Fマーク)を使用すること。
⑨あおりを立てる場合には、必ず固定すること。
⑩最大積載量が5t以上の貨物自動車の荷台への昇降は、昇降設備を使用すること。最大積載量が5t未満の貨物自動車の荷台への昇降についても、できる限り昇降設備(踏み台等の簡易なものでもよい。)を使用すること。
⑪荷や荷台、貨物自動車の運転席への昇降(乗降)については、三点確保(手足の4点のどれかを動かす時に残り3点で確保しておくこと)を実行すること。

※「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」は、厚生労働省のホームページ等で閲覧できます。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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