事例

Aさんから、「従兄弟が亡くなって相続をどうしたらいいか」とご連絡をいただきました。遺品整理の際、センターの資料があって電話したとのことでした。亡くなられたXさんは、3年前にお母様のご相続でご相談をいただいた方でした。

その時の相続人はXさんお一人であったため、手続きはスムーズに完了しました。その後、ご実家でお一人暮らしをされていたXさんは、叔母にあたるAさんのお母様と連絡は取り合っていたようですが、この度、ご自宅で突然亡くなられたようです。Xさんは未婚でお子様はいらっしゃらなかったため、Aさんら従兄弟が手分けしてご葬儀や遺品整理を行いました。相続財産はご両親から受けた自宅不動産や預貯金ですが、遺言は遺されていなかったとのこと。まだ50代で若く、Xさんご自身も亡くなることは想定していなかったのでしょう。
お母様の相続の際、ご自身の遺言を書いておくことを、もっと強く勧めるべきだったと後悔しました。

結果

Xさんには、配偶者、お子様(孫)、ご両親、兄弟姉妹(甥姪)がいないため、「相続人はいない」ということになります。この場合、遺言があれば、遺贈を受けた者が財産を受け継ぐことができますが、遺言がなければ親戚でも受け継ぐことはできません。
このように、相続人の存在が明らかでないとき、家庭裁判所は申立てにより、相続財産の清算人を選任します。清算人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどの清算を行い、清算後に残った財産を国庫に帰属させます。Aさんは司法書士と相談し、相続財産の清算人の選任申立を行いました。
ただ、Aさんらは、Xさんご家族が築き上げてきた財産が親族には一切入らずに国庫に帰属されてしまうのには、釈然としないご様子でした。そこで、家庭裁判所が相当と認めた場合に、被相続人と特別の縁故のあった者の請求によって、その者に、清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができる、「特別縁故者に対する相続財産分与の申立」、という制度もご案内しました。Aさんは、Xさんの供養のためにも申立を検討したいとおっしゃっていました。

法定相続人

相続人はすべて法律によって定められています。被相続人の子(その他の直系卑属)、父母(その他の直系尊属)、兄弟姉妹といった被相続人と一定の親族関係にある血族相続人と被相続人の配偶者です。
この血族相続人は順位が定められており、最優先順位の相続人のみが相続権を有します。
今回の事例のように、被相続人に配偶者や子がおらず、ご両親(祖父母)も亡くなり、一人っ子で兄弟姉妹もいない場合は、相続人はだれも存在しないことになります。

相続財産の清算人

相続人の存在が明らかでないとき、相続財産が誰に属するか分からないままでは管理上も問題がある為、相続財産は相続財産法人という法人となり、家庭裁判所は、利害関係人や検察官の請求により相続財産の清算人を選任します。相続人が数人いて、一部の者だけが分からない場合や、相続人はいるが行方不明、といった場合などは含まれません。相続財産の清算人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。

遺言書作成のススメ

このように相続人がいない場合は、相続財産は原則、国庫に帰属することになります。この場合に財産を承継したくても、特別縁故者は必ず認められるとは限りません。家庭裁判所への申立や公告期間を待つ必要もあります。
遺言書で遺言者が示しておけば、相続財産は国庫に帰属されることなく、受遺者が承継することができます。お子様がいない方で、特に一人っ子の方は(兄弟姉妹が既に亡くなっていて甥姪がいない方も)遺言書を作成されることを強くお勧めいたします。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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