事例

7月に亡くなったお父様Xさんの相続手続きについて、Aさんからご相談がありました。相続人は、Aさん、お母様、弟妹2人の合計4人です。お調べしたところ、相続財産はAさんとお母様が住むご自宅不動産が約3,800万円、預貯金が約300万円です。ヒアリングでは、生前贈与や名義預金、保険、生前の多額の引き出し等は無さそうです。相続税の申告は、相続財産が基礎控除を超えた場合に必要となりますが、お父様のご相続では基礎控除が5,400万円であるため不要と思われます。
遺言書はなく、遺産分割協議の結果、不動産と預貯金すべてを長男のAさんが相続するということで合意されました。何ら揉めることなく、順調に手続きが進み、相続発生2か月後の9月末にはすべての相続手続きが無事に完了していました。しかし、相続手続を終えて忙しい日常生活を送るAさんの元に、新年を迎えた矢先、税務署から一通の郵便が届いたのです。「相続税の申告等についての御案内(いわゆる『お尋ね』)」でした。

結果

その『お尋ね』は、何の前触れもなく突然やってきたため、Aさんは大層驚いたそうですが、「不動産の価値が高いため、税務署から相続税についての『お尋ね』が届くかもしれません。相続税申告は必要ないと思われる場合でも、『お尋ね』が届いたら無視することなく、しっかりと回答をしましょう。」という弊センターの相談員からの言葉がよぎり、すぐに落ち着きを取り戻し、改めてセンターへご連絡いただけたとのことでした。
「相続税の申告等についての御案内」は、相続税の申告をするか、同封されている『相続税の申告要否検討表』に財産を記載して返送するかを求めています。早速、税理士に依頼し、「相続税の申告要否検討表」を作成しました。
どんな方でも、税務署から通知が届くとドキッとすると思います。今回のように『相続税の申告等についての御案内』が届いた場合、税務署から相続税がかかる可能性があると思われています。基礎控除以下の場合でも、しっかりと回答することをお勧めします。

税務署から相続人に届く「お知らせ」や「お尋ね」

故人が亡くなって半年ほどした頃に、税務署から「相続税についてのお知らせ」あるいは「相続税の申告等についての御案内(いわゆる「お尋ね」)」という書面が、送付されてくることがあります。しかしこれらは、相続が発生したすべての方に送付されるわけではありません

「相続税についてのお知らせ」

相続税がかかる・かからないに関係なく、周知・広報の意味合いを込めてランダムに送られてきます。従って、全く相続税がかかりそうにない相続人の元にも届く場合があります。

「相続税の申告等についての御案内(お尋ね)」

一方、「お尋ね」は一定以上の相続財産があると見込まれる場合に送付されます。税務署は、故人の過去の収入や不動産の所有情報、生命保険会社や証券会社からの調書、相続時精算課税制度の利用有無など様々な情報を照合し、被相続人の財産の状況をおおむね把握することができます。被相続人が多くの財産を保有していれば、相続税の申告が必要である可能性が高いと判断し「お尋ね」を発送する仕組みです。
 もっとも、これが届いたとしても、当然に申告が必要というわけではなく、あくまで税務署からのお願いであり、回答提出の義務は必須ではありません。しかし、これが届くということは、税務署から目を付けられているとも捉えられるため、申告不要な場合でも無視はせず、同封の「相続税の申告要否検討表」という書面にて回答することが望ましいでしょう。
 その他、生前贈与や名義預金など、相続税申告は不要と思っていても、意外な落とし穴には注意が必要です。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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