事例

弟のXさんがお亡くなりになったとのことで、お兄様のAさんがご相談にいらっしゃいました。
Xさんは2度の結婚と離婚をされたそうですがお子様はいらっしゃらず、ご両親も既に亡くなられているので、相続人はAさんと姉のBさんになります。AさんもBさんも仕事でお忙しく、「相続手続をしなければ…」と思いつつも手が付けられないまま、ご相談にいらした時点では、既に7か月が経過していました。急いで戸籍の取得を開始しました。

結果

ご兄弟が相続人になられる場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の他に、ご両親の出生から死亡までの連続した戸籍も必要になります。
Xさんは何度も転籍をされていたこともあり、戸籍は全部で19通となりました。相続財産は、複数の金融機関の預貯金や不動産の他に株式や投資信託があり、相続税の申告が必要です。
しかし、株式や投資信託はネット証券3社で取引されていたようで、パソコンにログインできない為、残高が分かりません。遺産分割、相続税申告には、まずは金融資産の残高を照会する必要があります。この場合、ネットの証券会社は店頭窓口がない為、郵送でのやり取りとなり、その際、戸籍の原本の提示が求められます。戸籍を1セット用意しただけではどうしても手続に時間がかかってしまいます。

法定相続情報証明制度とは、平成29年5月から始まった新しい制度で、法務局に相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出し、登記官が認証文を付した写しを無料で希望の通数交付してくれるというものです。その一覧図が戸籍の代わりとなり相続手続を行うことができます。
早速一覧図の申請を行い、7通の交付を受け、一度に複数の金融機関で残高照会を行うことができ、それをもとに遺産分割協議を行い、無事申告期限に間に合うことができました。
複数の金融機関の預金口座の解約、不動産登記、税務申告の全ての手続で一覧図を利用することで、同時に様々な手続を進行させ、全体的に時間短縮を図ることもできました。

ポイント

定相続情報証明制度

 法定相続情報証明制度は、法務局に戸籍謄本等の束と併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出し、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれる制度で、平成29年5月29日から運用されています。交付された一覧図の写しが相続登記の申請手続をはじめ、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続に利用されることで、相続手続に係る相続人・手続の担当部署双方の負担が軽減されます。平成30年4月1日からは、相続税の申告書への添付や相続登記の際の住所を証する情報に使用できるようになる等、取り扱いの変更も行われています。

制度による手続き軽減のメリット

お一人様や子のいない夫婦の一方が亡くなり、兄弟姉妹や甥姪(第三順位)が相続人となる場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の他に、両親の出生から死亡までの連続した戸籍、兄弟姉妹や甥姪等の戸籍等、数多くの戸籍の取得が必要となります。子がいない方が亡くなった場合は、相続人が多数になることもあり、戸籍の取得も含めて煩雑な手続きが待ち受けていますが、取得した戸籍で法定相続情報証明制度を利用することにより、手続きが少しでも軽減されることでしょう。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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