食事中のムセは“誤えん”と“誤えん性肺炎”の原因とSTが指摘

 特養N苑のMさん(85歳女性)は要介護4の右半身麻痺の入所者です。食事が大好きで毎日楽しみにしていますが、1年前くらいから食事中にムセることが多くなりました。一度ムセが出ると止まらなくなり、介護職員は食事介助の手を止めて背中を摩ってムセが止まるのを待ちます。週に一度施設にやって来るSTがMさんの食事の姿勢を見て、「車椅子の背にもたれかかる姿勢はムセの原因になる」と言って座位を直してあげました。介護職員もMさんの姿勢を正してあげますが、すぐに後ろにもたれた姿勢になってしまいます。STは「食事に適した前かがみの姿勢を取らないと、誤えんや誤えん性肺炎のリスクが高くなる」と言って、クッションを作って来てくれました。後ろにもたれかかる姿勢の利用者にクッションを使うと、食事に適した前かがみの姿勢が簡単に取れます。Mさんのムセは減り、介護職員も食事介助が楽になりました。

クッションで前かがみの姿勢をつくるとムセなくなる・・・

ムセは誤えんのヒヤリハット?! 

 食べ物が気管に混入しそうになった時、私たちは自然にムセが出て、食べ物を気管から出そうとします。つまり、ムセは防御本能なのです。食事中のムセが多いということは、食べ物が気管に混入しそうになる回数が多いということです。食事に適した前かがみ姿勢を取ることで、食べ物が気管に混入しにくくなります。しかし、食事中に何度もムセると、少しずつ食べ物が気管に入り誤えん性肺炎を起こしやすくなります。

車椅子上で前かがみ姿勢をとる方法 

 車椅子の背もたれは75度くらいの傾きがあり、姿勢が後ろに傾斜してしまいます。STが作ったクッションは、上部に厚みがある為、車椅子の背もたれの傾斜がなくなるのです。柔らかいクッションでは上半身を支えられませんが、このクッションはラバーマットという硬い素材が入っているため、しっかり姿勢を支えてくれます。

N苑で作った「前かがみクッション」

 特養N苑では、STが作ってくれたクッションを参考に自らクッションを作成し使用しています。ムセも減り、利用者の表情まで変わって楽しそうに食べる人もいるそうです。みなさんの施設でも一度試してみてはいかがでしょうか?

執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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