「経済」「社会」「環境」の3要素の調和

SDGsとは1

最近、新聞テレビ等でSDGsを表すカラフルなアイコン/ロゴやカラーホイールを見る機会が増えてきています。SDGsとは、2015年9月にニューヨークの国連本部で全会一致(193加盟国)に採択された2030年までの国際目標です。英語ではSustainable Development Goalsと表記され、3つの頭文字であるS・D・Gと最後のsを取って「エスディージーズ」と呼ばれ、日本語訳は、「持続可能な開発目標」とされ「経済・社会・環境」の3要素の調和を謳っています。
目標は、右図のアイコン/ロゴにあるように、「①貧困②飢餓③保健④教育⑤ジェンダー⑥水・衛生⑦エネルギー⑧成長・雇用等⑨イノベーション⑩不平等⑪都市⑫生産・消費⑬気候変動⑭海洋資源⑮陸上資源⑯平和⑰実施手段」の目標(ゴール)と169のターゲットから構成されています。(※1)

そしてこの目標が決まった背景には、地球温暖化による気候変動や爆発的な人口増加等から、我々の住む地球がいくつかの側面で限界を越えつつあるという危機意識が国際社会にあると言われています。(※2) 我が国でも近年、最高気温の更新や百年に一度の大雨情報などの話を聞きますし、自然災害(写真※3)も増えてきています。 気候変動は環境省も、「気候危機」と表現を改めるなど身近な問題となってきました。 SDGsは、実は独立した文書では無く、その内容は、「我々の世界を変革する(Transforming our world):持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書の中にあり 、 前文には「誰一人取り残さないことを誓う」と強いメッセージが記載されています。(※4)

【宮城県丸森町(2019年10月)】※3

ここまでお読みになると、我が国のSDGs認知度が低い(大手新聞社等の調査によれば16%~27%と50%を超える欧米諸国に比べ低い)こともあり、 国や自治体の仕事で企業経営とは関係ないとお考えになる方もおられるかも知れません。(※5)

【長野県長野市(2019年10月)】※3

本シリーズでは企業経営とSDGsの関係性にフォーカスしてご説明していきますので、理解を深めることで、SDGsに関心を持って頂けましたら幸いです。
※1:17の目標(ゴール)、169のターゲット、232(重複込み242)のインジケーターから構成
※2:プラネタリー・バウンダリー「地球の限界」:環境学者ヨハン・ロックストローム氏提唱
※3:(出展)災害廃棄物対策フォトチャンネル
[URL:http://kouikishori.env.go.jp/photo_channel/]
※4:外務省HP「仮訳」
※5:電通調査(2019年5月)、朝日新聞調査(2019年8月)帝国データバンク調査(2020年7月)

SDGs×企業経営

世界的にESG投資の潮流が強くなっています。ESG投資とは、環境や社会のサステナビリティに対して、どのように対応しているかを考慮し、投資する手法で我が国でもその考えは急速に拡大しています。
ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」 「Governance(企業統治)」の3つの頭文字からきています。
言い換えれば、ESGに取組む企業の株式を購入しようという考えで、“取り組まないことは株価が下がるリスクもある“とも言え、企業経営にとって重要なテーマと考えられています。
ESGとSDGsは親和性が高く、最近のビジネスシーンで同意義語として語られることが多くなりました。
以下、企業戦略とSDGsとの関連性を4つの視点からご案内します。

point

1.差別化戦略

・国連が採択し政府や自治体が推奨するSDGsに取組むことで企業イメージは向上します。
また、多くの大学がSDGsに取組み始めた今、優秀な人材や多様な人材を採用するうえでのプラス効果も期待できます。 (将来は取り組まないことがリスクとなる懸念もあります。)

・ゴール8成長・雇用等にあるディーセントワークの取組みを進めることで、生産性向上やモチベーションアップに繋がります。
ディーセントワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことです。

2.生存戦略

・経団連の行動憲章が改定されたことも踏まえ、大企業は「お取引先行動指針(CoC)」などの発表を通じて、サプライチェーンに対してSDGsやESGへの協力を求める動きがあります。
また金融機関もSDGsを積極的に推進をしています。Withコロナ時代は金融機関との関係はとても大切です。関係構築にSDGsを活用すべきと考えます。

・今後は、SDGsの取組みが「取引条件化」される可能性もあり、リスクマネジメントの視点からもお取引先のCoCを意識した取組みが大切になってきます。

3.マーケット戦略

・SDGsは、エシカル消費やフェアトレード商品などへの関心の高まりから、ミレニアム世代やZ世代を中心に若い人びとに関心が高いとされています。
マーケティングにおいて、未来の消費者を予測するうえでもSDGsの理解と取組みは大切と言えます。
・SDGsは、社会課題や地域課題を表しており、これを解決する商品やサービスの開発は持続可能な経営を考えるうえで重要です。 (SDGsは経営のマイルストーンになると言われています。)

4.アライアンス戦略

・SDGsは世界を繋ぐ共通言語とも言われています。
17の各ゴールはこの意味で重要であり、様々なステークホルダーとのアライアンスを組むうえでの大切なキーワードとなることは間違いありません。

・また企業の成長にはイノベーションは不可欠です。自社だけの開発も大切ですが、アライアンスを通じてより早くより大きな社会的インパクトの実現が可能となります。

参考文献

環境省作成「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」
経済産業省作成「SDGs経営ガイド」
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)「企業行動憲章」実行の手引き

執筆者情報

記事の作成・編集:株式会社ふるサポ 代表取締役 中島達朗 氏

こちらの記事もおすすめです