まずは避難所の見直しを

避難所の現状

「避難所に土砂が流れ込んだ」というニュースを見たことがある方もいるかと思いますが、日本全国の市区町村が指定する避難所のうち、約27%が土砂災害警戒区域や浸水の可能性がある区域にあると言われています。災害が起きた際に、自宅や今いる場所が危険だからと、指定避難所へ避難してきた住民がまとめて犠牲になってしまう危険性があります。
また、「ここへ何人避難してもらおう」と想定していたのにも関わらず、避難所の浸水等が原因で、そもそも避難所として開設できなくなり、避難難民を生んでしまったり、特定の避難所に集中してしまい、想定していた許容人数を超えてしまうといった問題も起きてしまうかもしれません。

避難所見直しの動き

自治体によっては、既にそういった避難所を指定避難所から外し、公的機関や施設以外にも、民間のホテルや広い駐車場を持つスーパー、寺院などと協定を結び始めているところもあります。市区町村の地形によっては、安全な避難所の確保が難しい自治体では、隣接している市区町村の民間施設や企業と協定を結び、そこへ早い段階で、バス等で住民を送迎するという地域もあります。
まずは指定避難所と、避難所までの道路や橋などの動線の安全についての見直しをすることが必要です。

ペットの受け入れはペット関連施設に協力依頼を人間だけの避難を考えると、上記のような対策が思い通りに進めば解決するかもしれません。ただ、ペット同行・同伴避難者の受け入れとなるとそうはいきません。
民間の施設・企業の場合は、近い将来、本来の業務が控えているため、ペット(動物)の受け入れはより困難となります。ただし、本来の業務がペットを連れて入ることのできる動物病院、ペットサロン、ペットと泊まれるホテル、ペットと入れる飲食店などを始めとするペット関連施設であれば、比較的協力の了承を得ることは容易ではないかと考えています。

~ペット同行・同伴避難所設置に向けて~
例えば、自治体発行の「ペット同伴避難OK施設」シールなどを作成し、店舗やホームページに貼らせてもらえれば、住民への周知にもなりますし、施設側としても住民への良いアピールになるのではないでしょうか。もちろん指定避難所と同様に、避難スペースの面積から避難できる人数も割り出し、おおよそのペットの種類と数のペットフードやクレートなどの物資も準備しておく必要があります。地域によっては、そもそもペット関連施設が少ないこともあるかと思いますが、そういった場合は、新耐震基準を満たしている空き家や廃校・休校となった小、中学校などをペット同行・同伴避難家族向けへ優先して再利用できると、大人数が集まる避難所でのペットの苦情やトラブルも軽減されると考えられます。

避難にも多様性を

自他ともに認める災害大国にも関わらず、「避難」については残念ながら遅れていると言わざるを得ない日本。
「苦しい時、辛い時は不平不満を言わず、みんなで耐えるものだ」と、我慢を重ねることで受けてしまう多大なストレスが災害関連死の要因の1つとも考えられています。
また、過去の避難所では感染拡大したインフルエンザで避難者が亡くなるというケースもありました。
このコロナ渦を「避難=避難所へ全員集合!」ではなく、台風のような被災の時期が予測できる災害の場合は、事前に安全な他地域に住む親戚や知人のところへ避難することや、地震の場合は、地盤沈下の可能性や立地の安全確保と新耐震基準を満たした住宅での在宅避難も避難であるという考えの元、より安全を目的とした多様性のある避難を考える機会にできればと考えています。

執筆者情報

記事の作成・編集:株式会社まつもとひでき 代表 ドッグトレーナー、犬を愛する防災士・松本秀樹

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