感染者が増えれば入院さえも危ぶまれる

特養N苑の介護職Mさんは、新型コロナのクラスターが発生した劇場で濃厚接触者として名前が上がり、PCR検査を受けることになりました。Mさんは検査を受けた日に症状が出て、2日後に検査結果が陽性と判明し入院しました。保健所の指示で同じフロアの利用者30名全員と職員16名のうち12名(接触の少ない非常勤4名を除く)がPCR検査を受けることになりました。2日後に利用者5名と職員2名が陽性と判明し、利用者5名は入院、職員2名(無症状)は自宅療養となりました。同時に、利用者と職員全員のPCR検査が実施され、他のフロアの利用者を含む利用者14名と職員5名が新たに陽性と判明しました。市の保健所では市内の病床のひっ迫を理由に、利用者14名を施設内で治療すると伝えてきました。その後さらに感染は拡大し、最終的に100名の利用者のうち71名が感染し17名が亡くなりました。(本事例は実際の事例をもとに再構成したフィクションです)

PCR検査(感染疑惑)の段階で観戦発生時の態勢を!

なぜ急速に感染が拡大したのか?

 N苑ではなぜ急速に感染が拡大したのでしょうか?一つ目の理由は、PCR検査の段階で「一斉環境消毒」や「職員間の接触禁止」などの対策を講じなかったことです。2つ目の理由は、陽性が判明した時点で職員の一部しか検査を実施しなかったことです。Mさんは検査の日にはすでに症状が出ていたとすると、検査の3日前から前日が最も感染力が強かったと考えられます。この時期にMさんと接触した職員が感染していて、他のフロアの職員にも感染が拡大したと考えられるでしょう。

検査前日が感染日のピークだった

 新型コロナウイルス感染症は、感染から平均5~6日で発症します。そして感染力は発症の3日前から高くなり、00.7日前がピークとなります。本事例に当てはめてみると、感染は検査の3日前に始まり、ピークは検査の前日ということになります。Mさんは3日前から周囲にウイルスを拡散させていたことになります。この局面で何もせずに検査の結果を待っていたのでは、感染対策のスタート時点から全てが後手に回ってしまったと言えるのです。

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監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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