2大トラブル

避難所においてのトラブルや苦情の内容には「糞、尿の匂い」 と「犬の吠える声」が圧倒的に多いです。

糞、尿の匂い

糞、尿の匂いについては、決めた可燃ゴミ捨て場が利便性の観点から居住域に近かったり、遠くても風向きによっては匂いが届くこともありました。
匂いの対策としては、ゴミ捨て場の場所と距離を考慮することや、ペットシート、環境に配慮した消臭剤や臭わない袋(BOS)などを備蓄することをおすすめします。

犬の吠える声

よく「無駄吠え」と表現されますが犬が無駄に吠えることはなく、必ず何かしらの理由があります。
飼い主と離れたことによる不安、近くに他の犬がいる、見えることによる威嚇や、知らない人が近くを通る、いることによる威嚇などであり、家での環境と違うこと=《いつもと違う》ことによる怖れや不安が原因であると言えます。
そのため、いつも家の中で家族と過ごしている犬が、家族と離れ不安を感じて吠えている場合は、一緒にした方が吠えることは少なくなります。いつも外で番犬をして吠えることが仕事のような生活をしている犬のハウスには、布やタオルなどで目隠しをして、《いつもの仕事》の情報量を減らしてあげると効果的です。
このように、この犬はなぜ吠えているのか?という理由を、飼い主家族にヒアリングし適切な対応を指導してくれる、犬の行動学に精通したドッグトレーナーなどに事前に声をかけておくとトラブルは減らせると思います。


~お出かけ上手で避難上手に~

犬にとっても「避難」はいつもの生活とは全く異なる非常事態です。
だから平常心ではいられず、その環境にストレスを抱えて吠えてしまいます。そこで、ドッグトレーナーとして、ペットオーナーの皆様へおすすめ、お願いしていることがあります。それは、犬と一緒にお出かけや旅行をしてもらうことです。お出かけや旅行というのは、知らない場所へ行き、知らない匂いを嗅ぎ、知らない人や犬と出会い、知らない場所で寝るという、非日常を経験することになります。災害時の、飼い主や周囲の緊張感は再現できませんが、とてもいい避難訓練になっていると言えます。
自治体の皆様には是非、県内・市内のペットと泊まれる施設や、ペットと一緒に入って楽しめる施設を住民の皆様へ紹介したり、そこへ犬を連れてお出かけしたくなるようなイベントを実施してもらえると、災害時の避難所でのペットトラブルを減らすことにつなげることができるのではないかと考えています。

他人を知人へ

避難所でのトラブルや苦情は、【ペット同伴避難チーム】対【ペットが苦手チーム】及び【ペット非飼育チーム】で起こると想定されがちですが、実はそれだけではないのです。
「お前の犬がうるさい」「お前の犬はくさい」と【静かな犬チーム】対【吠える犬チーム】、【匂わない犬チーム】対【匂う犬チーム】でもトラブルは起きています。
つまり、トラブルや苦情そのものは犬を始めとするペットが起こすのではなく、人と人とが起こしているわけです。「この人は私と別のチーム=他人=敵(悪者)」と考えているから文句を言える、ミスやエラーを指摘してしまうので、なるべく多くの県民、市民の皆様を同じチームの一員だと思わせることが大切です。
それには、やはりなるべくたくさんの方が交流することが必要だと思います。交流をすることで「同じ町に住んでたことがあるチーム」「昔、同じ犬種の犬を飼っていたチーム」など、今まで別のチームだった人を自分と同じチームに入れてくれるようになります。
つまり、いかに他人から知人になる人数を増やせるかだと思います。

執筆者情報

記事の作成・編集:株式会社まつもとひでき 代表 ドッグトレーナー、犬を愛する防災士・松本秀樹

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