「感染症対策」と聞くと、3蜜を避け、手洗いとマスクと咳エチケット・・・といったような、新型コロナウィルス感染症対策を真っ先に思い出しますが、ペット同行避難をする上でも気をつけなければならない感染症がいくつかあります。
それは【人獣(人畜)共通感染症】で、文字通り人から動物、動物から人へ伝播する感染症です。約30種以上ある人獣(人畜)共通感染症の中で、ここでは動物から人へ伝播する最も気をつけていただきたい感染症である「狂犬病」・「マダニ」対策について書きます。

狂犬病

狂犬病の事例

狂犬病は人を含む全ての哺乳類が感染する可能性があり、人への感染経路のほとんどは犬に咬まれることです。人が感染、発症すると100%死亡する恐ろしい感染症です。世界では毎年5万人以上が死亡しており、日本でも2017年(2名)、2020年(1名)にフィリピン、ネパールで犬に咬まれた方が帰国、入国後発症し死亡しています。
この事例は日本国内で感染があったというわけではありませんが、日本では海外から毎年30万頭近くの動物を輸入しており、北海道や富山県の港では、狂犬病の発生があるロシアの船から、検疫を受けていない犬が逸走し、捕獲されるといったようなことも起きています。

狂犬病を蔓延させないために

蔓延防止には、犬への予防接種が有効であり、WHOは集団免疫における保有率を70%に維持することを推奨しています。
しかし日本では現在、畜犬登録をしている犬が70%、これに畜犬登録をしていない犬が存在すると考えると、犬の実数に対する接種率は50%を下回るのではないかと言われています。こういった現状を踏まえると、日本の野生動物が‘狂犬病ウィルスを保有していないとは言い切れません。
従って、各自治体の皆さまには畜犬登録と狂犬病予防接種率を上げるために、「啓蒙のポスターを作成し貼る」、「犬飼育世帯にハガキを送付する」のに加えて、「狂犬病予防注射を打つとドッグフードのサンプルがもらえる!」「抽選で5千円の地域クーポン券があたる」など、狂犬病予防注射を打つとちょっと得をするかも…といったような柔軟な施策を検討していただきたいです。
これは犬、犬飼育世帯のためだけに血税を使うということではなく、犬を飼っていない全ての県民、市民、ひいては日本国民全てを守ることにもつながることだと考えています。

マダニ

狂犬病以外にも気をつけたい人獣(人畜)共通感染症の中に【重症熱性血小板減少症候群(SFTS)】があります。
これはこのウィルスを保有する草むらや林にいる数種のマダニに咬まれることで感染・発症します。発症すると致死率が10〜30%と高く、日本では2013年以降、約70名が死亡しており、静岡県より西での発生が多くみられます。もちろんマダニなので、散歩している犬やお出かけする猫に取り付き、噛み付くことで犬や猫にも感染します。そのため、避難所へ犬や猫がマダニを体につけて持ち込む可能性があるということです。
対策としては、マダニが多く発生する春〜夏にかけての犬、猫の飼育者にノミやマダニの駆虫薬(飲む、食べる、滴下する)の徹底をお願いするということが有効だと考えています。

最後に ~災害大国から防災大国へ~

世界でも有数の災害大国である日本。しかし、避難や防災という側面から見れば、残念ながら世界に遅れていると言わざるを得ません。歴史上、災害により多くの犠牲を払い、災害に関するデータやノウハウはたくさん持っているはずなので、防災に関しての教育や研究にお金と時間をもっとかけて、世界に誇れる防災大国になれると信じています。

この「ペット防災ニュース」も今回で最終号となり、私の意見や提案が自治体職員の皆様、県民、市民の皆様のお役に立てていれば嬉しい限りです。ありがとうございました。

執筆者情報

記事の作成・編集:株式会社まつもとひでき 代表 ドッグトレーナー、犬を愛する防災士・松本秀樹

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