令和5年度予算・令和4年度補正予算のデジタル田園都市国家構想交付金の中でも、デジタル実装を支援するためのメニューが「デジタル実装タイプ」と呼ばれています。

デジタル実装タイプは、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けて、以下の取組を行う地方公共団体に対し、その事業の立ち上げに必要なハード/ソフト経費を支援するとされ、以下に分かれています。

優良モデル導入支援型 TYPE 1
他の地域で既に確立されている優良モデルを活用した実装の取組

データ連携基盤活用型 TYPE 2
デジタル原則とアーキテクチャを遵守し、オープンなデータ連携基盤を活用する、モデルケースとなり得る取組

マイナンバーカード高度利用型 TYPE 3
新規性の高いマイナンバーカードの用途開拓に資する取組

マイナンバーカード利用横展開事例創出型 TYPE X*
マイナンバーカード交付率が高い団体における全国への横展開モデルとなる先行事例構築に寄与する取組
※TYPE Xという記載は正式な文章ではないが、令和4年12月12日の内閣府、内閣官房、デジタル庁の説明会において、TYPE Xとの呼称があったため記載
※令和4 補正限りの時限措置

地方創生テレワーク型
「転職なき移住」を実現するとともに、地方への新たなひとの流れを創出する取組

その中でも今回は、デジタル実装タイプのTYPE1/2/3/Xを中心についてフォーカスを当てます。

昨年もデジタル実装タイプの募集はされていて、共通の要件である「①デジタルを活用して地域の課題解決や魅力向上に取り組む」「②コンソーシアムを形成する等、地域内外の関係者と連携し、事業を実効的・継続的に推進するための体制を確立」については変わっていません。

今回は、マイナンバーカードの普及促進、スタートアップの活用、地域間連携など、重点施策を推進することに力点が置かれています。それらの施策について触れていきます。

マイナンバーカード普及促進

マイナンバーカードの普及については、11月末の全国平均交付率である53.9%※が基準となります。データ連携基盤活用型 TYPE 2とマイナンバーカード高度利用型 TYPE 3は、この基準を超えていないと申請ができません。またデータ連携基盤活用型 TYPE 2とマイナンバーカード高度利用型 TYPE 3は、全住民への交付を目標として掲げていることも申請要件として定めています。優良モデル導入支援型 TYPE 1においては、53.9%の基準をクリアしていると加点の対象となります。

優良モデル導入支援型 TYPE 1の加点については、53.9~60%未満が加点+4、60~70%未満が加点+7、70%以上が加点+10です。70%以上の加点がされる自治体は現在99自治体ですが、実際の申請においては、申請時期により12月末又は1月末の申請率を評価対象とするため、実際は多くの自治体が加点対象になりそうです。

マイナンバーカード利用横展開事例創出型 TYPE Xは、全国への横展開モデルとなるカード利用の先行事例の構築につながる取組の支援が目的なので、申請率7割以上の自治体が対象になっています。

マイナンバーカードの利活用について、優良モデル導入支援型 TYPE 1およびデータ連携基盤活用型 TYPE 2においては、先進性・新規性等は問わずマイナンバーカードを利活用する取組は加点の対象となります。マイナンバーカード高度利用型 TYPE 3やマイナンバーカード利用横展開事例創出型 TYPE Xにおいてはカードの新規用途開拓が必須要件になっています。

マイナンバーカードの利用事例として挙げられているのは以下となります。

マイナンバーの利用事例

スタートアップの活用

今回のデジタル田園都市国家構想TYPE1/2/3の政策的優遇措置として、地方におけるスタートアップの活用が挙げられています。スタートアップの活用とは、「スタートアップ」がサービスの提供主体となる場合や「スタートアップ」が提供サービスの一部機能を担う場合、地場にそのスタートアップである場合が、加点の対象となります。

デジタル田園都市国家構想交付金にて加点対象とする「スタートアップ」の要件も明確になっており、以下の4点を満たす企業をスタートアップと定義しています。

  • 新しい技術やアイデアをもとに、地域の課題解決に主体的に取り組める企業であること
  • 創業から 15 年以内であること
  • 未上場であること
  • 申請時にプロダクト(サービス含む)を市場に提供しており、本交付金事業終了までに地域へのサービス実装が実現できること

デジタル田園都市国家構想交付金にて加点対象とする「地場スタートアップ」の要件も以下の2点で定義されています。

  • 申請主体である地方公共団体の位置区域で、事業の拠点(本社または支社機能の設置、ないしは1年以上のサテライトオフィス法人契約を締結済)を置いていること
  • 3年以内に、申請主体である地方公共団体における、スタートアップを対象とした実証事業に採択実績があること(併せて、地方公共団体とスタートアップの間で、事業運営の継続性に係る今後の連携に関する協定を締結していること)

なお、例えば「スタートアップ 」が県の実証事業に採択され、県下の村をフィールドにて実証を行った場合は、当該県または当該村いずれも申請可能とする

スタートアップの対象外要件は以下のように定義されています。

  • 常時雇用する従業員数 が 500 人 以上の企業(以下「対象外企業」という。)
  • 発行済株式の総数の 1/2 超を「対象外企業」に保有されている企業、又は発行済株式の総数の 2/3以上を複数の「対象外企業」に保有されている企業

なおこの場合の「対象外企業」には、VC(ベンチャーキャピタル)は含まれない

常時雇用する従業員数については、別途以下に整理がされています。

正社員、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、以下の①または②のいずれかに該当する従業員を指す。(事業主、法人の役員、臨時の従業員は含まない。)

①期間の定めなく雇用されている者

②過去 1 年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

(一定の期間を定めて雇用されている者または日々雇用される者であってその雇用契約期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる者)

地域間連携の促進

今回のデジタル田園都市国家構想TYPE1/2/3の政策的優遇措置の2つ目として定義されているのが、「地域間連携の促進」です。デジタル田園都市国家構想総合戦略の策定における議論および地域間連携を推進するため、一定の地域間連携事業について加点や団体毎の申請上限数の枠外とされます。

  • 定住自立圏や連携中枢都市圏に基づく地域間連携の取組
  • 隣接していない地域間における遠隔での地域間連携の取組

地域間連携そのものも評価をするとありますが、地域間連携による①コストの低廉化、②サービス品質の向上、③利用者の負担軽減などの効果も加点の対象となります。定量的に見せることが難しい内容ではありますが、地域の連携を進めるための施策として自治体間の連携の促進につながりそうです。

施策間連携の推進

今回のデジタル田園都市国家構想TYPE1/2/3の政策的優遇措置の3つ目として定義されているのが、「施策間連携の推進」です。他省庁補助金等の関連する他政策との戦略的な連携を図る事業について、一定の「加点」を措置がされます。

他省庁補助金等の関連する他政策との戦略的な連携を図る事業とあり、実施計画に連携を図る事業の具体的な記載を求められますが、各省庁施策と一体となることにより、一層の推進が期待されます。

共通化・標準化の推進

今回のデジタル田園都市国家構想TYPE1/2/3の政策的優遇措置の4つ目として定義されているのが、「共通化・標準化の推進」です。デジタルを活用して地域の課題解決等を図るサービス・システムの共通化・標準化を推進する観点から国等が定める標準仕様に準拠したサービスであって、ガバメントクラウド等を通じて全国共通に提供されるサービスを利用する事業に関して加算されます。

今回の対象になっているのは以下の2つのサービスです。

デジタル庁が提供する「窓口 DXSaaS 」

『 書かない、待たない、回らない(ワンストップ)窓口 』 の実現に向けて、デジタル庁がガバメントクラウド上における共同利用システムとして提供予定の「窓口 DXSaaS 」を利用して、住民向けサービスを提供する事業

J LIS が提 供する「コンビニ交付サービス」及び「被災者支援システム」

J LIS (地方公共団体情報システム機構)が自治体基盤クラウドシステム BCL ※※)によって提供する「コンビニ交付サービス」又は「被災者支援システム」を利用して、 住民向けサービスを提供する事業

令和4年12月12日の内閣府、内閣官房、デジタル庁の説明会をベースにして本記事を作成

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます

執筆者情報

著者 株式会社カルティブ 代表取締役 池田 清

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