猛暑の傾向が強まる近年、運転に多大な影響を及ぼす熱中症への対策は夏場における運転者管理の重要なポイントとなります。また、長時間労働の改善を図ることを目的として2017年に乗務記録の記載事項に関する法令改正が行われましたが、2019年5月にも記載事項の法令改正が行われ、2019年6月15日に施行されました。
そこで今回は熱中症防止のための指導のポイントと法令改正の内容を紹介します。

 

熱中症防止のためのドライバーへの指導のポイント

熱中症の危険性

熱中症については、「熱中症診療ガイドライン2015」(日本救急学会)等に基づいて、右表のようにⅠ度からⅢ度に分類されています。Ⅲ度が最も重い症状ですが、そこまで重症ではなくても、万一走行中にめまいや立ちくらみなどに襲われたら、正常な運転ができなくなって重大事故につながる大きな原因となります。ドライバーに対する熱中症防止のための指導は、夏場における重要な取組といえます。

ドライバーへの指導のポイント

熱中症を防止するために、ドライバーに対して特に次の事項を指導しましょう。

○熱中症を軽視しない
業務の大半がエアコンの効いた運転席で行われるため、熱中症にかかることはないと考えているドライバーも少なくありません。しかし、積込みや取卸しは屋外で行われることが多いことや、集配業務では頻繁に車を乗り降りすることなど、熱中症にかかる可能性は十分あります。熱中症の危険性や症状などをしっかり理解させましょう。

○水分・塩分をとる
水分・塩分をとることは、熱中症予防の基本ですから、たとえ喉が渇いていない場合でも、定期的に水分・塩分をとるよう点呼等の機会を活用し、指導しましょう。

○熱中症の兆候が現れたら、ただちに運転を中止する
熱中症の分類「Ⅰ度」にあるような初期的な症状が現れたときは、決して無理をせず、ただちに運転を中止し、安全な場所に車を止めて、会社に連絡し指示を受けることを徹底させましょう。大したことはないと判断して運転を続行すると、症状が重くなっていき、取り返しのつかない事態を招く危険があります。

○日常の健康管理に留意する
睡眠不足や体調不良、前日の飲酒、朝食をとらない、下痢などの脱水症状などは、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあるとされています。そうした状態に陥ることがないよう日常の健康管理に十分留意し、節度ある生活を心がけるよう指導しましょう。

法令改正:乗務記録の記載事項の追加

貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条の「乗務等の記録」が一部改正され、同条第1項第6号に、下記の「ハ」が追加されました。(2019年6月15日施行)

ハ 集貨地点等で、当該一般貨物自動車運送事業者等が、荷役作業又は附帯業務 (以下「荷役作業等」という)を実施した場合(荷主との契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合にあっては、当該荷役作業等に要した時間が1時間以上である場合に限る。)にあっては、次に掲げる事項(荷主都合による荷待ちの場合は、(1)及び(2)に掲げる事項を除く。)
(1)集貨地点等
(2)荷役作業等の開始及び終了の日時
(3)荷役作業等の内容
(4)(1)から(3)までに掲げる事項について荷主の確認が得られた場合にあっては、荷主が確認したことを示す事項、当該確認が得られなかった場合にあっては、その旨

※「荷役作業」とは、「集貨地点等における積込み又は取卸し」をいいます。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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