これまで、国土交通省の「貨物自動車運送事業の行政処分等の概要」の一部(「指導監督違反」と「点呼違反」)をご紹介しましたが、こうした違反行為の把握については、基本的に「監査」によって行われます。監査は、「自動車運送事業等監査規則」及び「自動車運送事業(一般貸切旅客自動車運送事業を除く。)の監査方針について」 (以下、「監査方針」と言います。)に基づいて実施されます。そこで今回は、「監査方針」の概要をご紹介します。

 

1 監査の基本方針

監査の主な基本方針は、次のとおりです。

○事業者に対する監査は、輸送の安全の確保が最も重要であるという基本的認識の下に行うこととし、輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者を優先的に対象とするほか、過去の監査、行政処分等の状況、利用者等からの苦情等を踏まえ、事故の未然防止及び法令遵守の徹底を図ることを目的として実施する。

○事業者に対する監査は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関との連携により、監査及び指導の充実及び強化を図る。

○貨物自動車運送事業においては、元請事業者の下請事業者に対する輸送の安全の確保を阻害する行為の排除を視野に入れた監査を実施する。

○事業者に対しては、監査のほか、呼出指導の実施を通じて、法令遵守意識の醸成を図る。

2 監査の種類と方法

監査の種類

①特別監査引き起こした事故又は疑いのある法令違反の重大性に鑑み、厳格な対応が必要と認められる事業者に対して、全般的な法令遵守状況を確認する監査。

②一般監査特別監査に該当しないものであって、次項の「3 特別監査と一般監査の対象事業者」に掲げる、監査を実施する端緒(きっかけ)に応じた重点事項を定めて、法令遵守状況を確認する監査。

③街頭監査事業用自動車の運行実態等を確認するため、街頭において事業者を特定せずに実施する監査。

監査の方法(街頭監査を除く)

①臨店による監査事業者の営業所その他の事業場又は事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施する監査。

②呼び出しによる監査事業者の代表者もしくはこれに準ずる者等を地方運輸局又は運輸支局等へ呼び出して実施する監査。

3 特別監査と一般監査の対象事業者

監査方針で定められた20程度の項目に該当する事業者が監査対象としていますが、主なものをあげてみます。

○地方貨物自動車運送適正化事業実施機関や利用者等からの情報、街頭監査や事業用自動車への添乗調査の結果等により、法令違反の疑いがある事業者。

○事業用自動車の運転者が第一当事者と推定される死亡事故を引き起こした事業者。

○事業用自動車の運転者が悪質違反(救護義務違反、酒酔い運転、薬物等使用運転、妨害運転、無免許運転、酒気帯び運転、過労運転、無資格運転、無車検運行及び無保険運行をいいます。)を引き起こした又は引き起こしたと疑われる事業者。

○自動車事故報告規則に定める事故であって、自動車事故報告書の「事故の原因」及び「事故の種類の区分」が同一であるものを3年間に3回以上引き起こした事業者。○適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否した事業者。

○都道府県公安委員会、労働局、道路管理者等からの通知又は通報により、法令違反の疑いがある事業者。

○事業用自動車のホイール・ボルトの折損による車輪脱落事故又は整備不良に起因すると認められる死傷事故を引き起こした事業者。

○貨物自動車運送事業者の輸送の安全確保義務違反が認められた場合であって、当該違反への関与が疑われる元請事業者。

○貨物自動車運送事業者の輸送の安全確保義務違反について、元請事業者に対する下請事業者等からの苦情等により、監査を行うことが必要と認められる元請事業者及び下請事業者。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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