これまで、国土交通省の「貨物自動車運送事業の行政処分等の概要」の一部(「指導監督違反」と「点呼違反」)をご紹介しましたが、こうした違反行為の把握については、基本的に「監査」によって行われます。
監査は、「自動車運送事業等監査規則」及び「自動車運送事業(一般貸切旅客自動車運送事業を除く。)の監査方針について」 (以下、「監査方針」と言います。)に基づいて実施されます。
そこで今回は、「監査方針」の概要をご紹介します。

 

「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」において、点呼違反は、「未実施」と「不適切」の2つに区分されています。「未実施」とは、点呼が実施されなかった場合をいい、「不適切」とは、点呼は実施されたものの、実施事項に不備があった場合をいいますが、「未実施」については、主なものを以下に紹介します。

点呼の未実施に該当する主な事例

①点呼を実施しなかった、又は実施できなかった場合

事例:運転者が所属している営業所とは離れた遠隔地の営業所において、運転者が独断で出発予定時刻よりも先に出発したため、運行管理者が予定時刻に点呼執行場所に出向いたものの、運転者不在で点呼が実施できなかった。

②点呼を対面によらず電話その他の方法で実施(運行上やむを得ない場合を除く)した場合

事例:深夜の出発時において、運行管理者と補助者のいずれもが所用のため営業所以外の場所にいたため、運行管理者が電話で点呼を行った。
※車庫と営業所が離れている場合及び早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」には該当しないとされています。

③補助者の要件を満たしていないものが実施した場合

事例:点呼時に、運行管理者と補助者のいずれもが所用のため営業所以外の場所にいたため、代わりに事務職の従業員が点呼を行った。※点呼は運行管理者又は補助者が実施しなければならず、それ以外の従業員が実施しても認められません。

点呼を確実に実施するために

〇事業者は運行形態等に応じて、点呼に漏れが出ないよう十分な数の運行管理者や補助者を選任しておきます。

〇点呼執行者は乗務割等により乗務前点呼が必要な時間帯はあらかじめ把握できるため、その時間帯には営業所を離れないようにします。

〇運転者が独断で出発時刻を変えるようなことはあってはならないことですから、その点を指導します。

「安全規則の解釈及び運用」の改正箇所

※改正箇所を下線表記

第3条の2 点検整備

(1) 自動車の構造・装置や使用状況に応じた点検・整備を行うこと。

① 特種車や架装部分の点検・整備
② シビアコンディション(雪道(冬用タイヤの溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度を超えていないことの点検・整備を含む。)、塩害、悪路走行、走行距離、登降坂路等)の対応。このうち、冬用タイヤの点検・整備は、日常点検と合わせて点検するなど、雪道上の輸送の安全を確保する必要がある。

第11条 異常気象時等における措置

異常気象その他の理由」とは、大雨、大雪、暴風等の異常気象、土砂崩壊、路肩軟弱等の道路障害等をいい、「必要な措置」とは、暴風警報等の伝達、避難箇所の指定、運行の中止等の指示のほか、雪道を走行するおそれがある場合においては、日常点検の際に整備管理者等によって冬用タイヤに溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度を超えていない等が確認されていること等、滑り止めの措置が講じられていることの確認をいう。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研

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