事例

ご主人のXさんが亡くなったとして、奥様のYさんから相続手続の依頼がありました。長男Aさんと二男Bさんをふくめて、相続人は3人。相続財産はご自宅不動産や預貯金などで、相続税の申告が必要です。
Yさん、Aさん、Bさんで遺産分割協議を行いました。Yさんが高齢なことから、Yさんが亡くなった場合の相続税がどうなるかを含めて検討したいとAさん。BさんもYさんも同意し、いわゆる二次相続(Yさんが亡くなった場合の相続)も踏まえて検討することとなりました。

結果

二次相続を検討するに当たり、Yさんご自身の財産内容の確認が必要でした。既に、Yさんご自身が親の相続で受けた不動産と多額な預貯金をお持ちです。
Xさんの相続(一次相続)でYさんが全て相続されると、配偶者として相続税はかからないことになります。しかし、元々お持ちの財産にXさんの財産が加わるため、Yさんの相続(二次相続)の際、子供たちの税負担が多くなってしまいます。
そこで、Xさんの相続(一次相続)でYさんが全て相続するのではなく、AさんやBさんと共に分割して相続することにして、なおかつ、Yさんが自宅不動産を相続すれば、小規模宅地の特例が適用でき、一次相続でのAさんやBさんの税負担が軽減されることをご案内しました。その他にも、いろいろなパターンを試算し、一次相続と二次相続を両方勘案して、税負担が低くなる分割方法を検討していきました。
もっとも、二次相続の際に、現在と事情が変われば、その試算も変わってきます。現在、AさんとBさんはYさんとは別居しています。このうち、長男のAさんはご自身名義の不動産にお住まいですが、二男のBさんは社宅住まいで、将来的には、実家でYさんと住むことも考えているようです。その場合は、二次相続の際に、同居のBさんが自宅を相続して小規模宅地の特例を使うことも可能です。かくして、それぞれの思いや事情等を検討した結果、今回の一次相続では、Yさんが自宅不動産も預金も全て相続し、子二人に対して、税負担額を考えながら決めた代償金を支払うこととなりました。

ポイント

家族全員で将来のことを話し合うことができる機会に、終活(エンディングノート作成や遺言書の作成)を検討することをお勧めします。

●一次相続と二次相続

父、母の死亡により子供は2度相続手続を行いますが、このうち、1度目を「一次相続」、2度目を「二次相続」と呼ぶことがあります。一般的に相続人はそれぞれ、一次相続は「配偶者と子」、二次相続は「子」となりますから、相続人の構成に違いがあり、相続税の申告においては、「基礎控除額」「配偶者税額軽減」「死亡保険金・死亡退職金の非課税枠」「小規模宅地等の特例」等で違いが生じます。このことから、一次相続の遺産分割の際に、二次相続での子供たちの税負担を考慮して検討する場合もあります。それは、被相続人の配偶者は、遺産分割や遺贈で取得した正味の遺産額が、法定相続分相当額か1億6千万円のどちらか多い金額までは、相続税がかからず(配偶者の税額軽減)、従って、一次相続で配偶者が多く相続すれば一次相続での税負担は抑えられる反面、二次相続での税負担が増える可能性があるからです。


●様々なことを考慮して検討を

相続税の基礎控除額は、相続人の人数が多くなるほど高くなるため、養子縁組をして相続人の数を増やしておくことは相続税対策となります。しかし、相続税の計算上、法定相続人の数に含めることができる養子の数は制限され、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までとなっています。ただし、Xさんのように配偶者の実子を養子にする場合はこの制限を受けません。今回のケースでは、法定相続人3人として計算される為、基礎控除額が4800万円(3000万+600万×法定相続人の数)となり、相続税申告は不要となりました。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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