■災害対策の業務継続計画書が遂に完成、でも・・・
 特別養護老人ホームS苑では、運営基準で災害対策BCPの策定が義務付けられたことを受けて、委員会を作り1年間検討してきました。3月にやっと計画書が完成し、4月からはいよいよ訓練や研修の準備を始めなければなりません。そこで、S苑では出来上がった計画書を福祉のBCPに詳しい専門家に見てもらいましたが、「重要な対策がたくさん抜けている」と厳しい指摘を受けてしまいました。指摘の内容は次の通りでした。
1.リスク想定と損害軽減対策が不十分であり、災害対策そのものの見直しが必要
2.職員不足と業務効率悪化という業務環境の変化に対応が不十分である
3.栄養管理や暑さ対策など利用者の生命にかかわる対策が具体的でない
4.震災対策が中心で水害発生時の避難確保計画など水防法への対応が不十分
さて、どのような点をどのように見直したら良いのでしょうか?

業務継続計画は徹底した損害軽減対策の上に成立する

■災害対策BCPを策定する手順

専門家の指摘通り、災害対策とBCPは密接な関係があります。災害対策が不十分で損害が大きくなれば、業務継続の支障は大きくなり、BCPは絵にかいた餅になる可能性があります。災害対策を徹底して業務継続への影響を正確に想定しなければならず、BCPだけ作成しても機能するはずがありません。

専門家の指摘とは? 

ここで専門家が指摘した4つの問題点を、もう少し詳しく解説しましょう。

  1. リスク想定は地域固有のリスクと施設・事業所の立地リスクから正確に把握しなければ、損害軽減対策は十分とはいえません。特に近年急激に増加している想定を超える雨量による豪雨災害では、地域による差が大きく、該当地域の雨量増加リスクの把握が重要になります。
  2. 職員不足・停電、物資不足の三重苦から、職員一人当たりの業務負荷は10倍以上になると想定されます。業務を絞り込むだけではなく、業務運営も工夫しなければなりません。
  3. 厨房業務の停止による低栄養や、酷暑期のエアコン停止による熱中症で、利用者は深刻な生命の危機に直面します。栄養補助対策と暑さ対策は業務継続対策の要です。
  4. 2017年の水防法の改正によって、要配慮者利用施設のうち浸水危険区域や土砂災害危険区域に所在する施設は、避難確保計画の策定を義務付けられました。水害発生時の避難方法は何通りも作って、臨機応変に使い分けなければ利用者の命を守れません。

災害対策BCPで忘れてはいけない25の対策

専門家の指摘にもあった通り、業務継続計画は徹底した損害軽減策を前提に成り立っています。損害軽減策によって業務継続の影響を減らした上で、実行性のある業務継続計画が成立するのです。安全な介護では災害対策と業務継続計画をより実効あるものにするために、「災害対策BCPで忘れてはいけない25の対策チェック表」を用意しました。あなたの施設の業務継続計画で重要な見落としが無いか、チェック表で確認してみてください。

各チェック項目が十分な場合はチェックをいれてください。もし半分以上チェックが入らなかった場合は、災害対策から見直した方が良いかもしれません。「災害対策BCP見直しのポイント」を用意しておりますので、必要な方は別紙資料をご参照ください。

2024年3月のBCP作成義務化期限に向け、リスク別・事業所別に年間を通じて作成セミナーを実施します。

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執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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