事例

お姉様を亡くされたAさんよりご相談をいただきました。お姉様のXさんにはお子様がいらっしゃいません。
Xさんは7人兄弟姉妹で、アパート兼自宅や多くの金融資産をお持ちです。ご面談の際には、Aさんのお子様Bさんが同席されました。BさんはXさんと昨年養子縁組をしていました。XさんはBさんを我が子同然に可愛がっていらっしゃったということでした。また、お子様がいらっしゃらないことから、相続対策として作成していた、Aさんが受遺者となる遺言書を撤回し、Bさんを養子にされたということでした。

結果

養子も実子と同じく、第一順位の相続人となりますので、Xさんの相続人はBさん一人となります。相続人が一人の場合、基礎控除額は3600万円(3000万+600万×法定相続人数)と低く、Xさんがお持ちのアパート兼自宅や多額の金融資産を加えると、Bさんの相続税の負担は大きいものとなってしまいます。アパート兼自宅がある土地や駐車場は、諸要素を考慮して、できるだけ低額になるよう評価を行い、少しでも相続税の負担が少なくなるよう、申告しました。

ところで、お子様がいらっしゃらない方には、養子縁組の他に遺言を遺すという相続対策もあります。
仮にBさんに遺贈するという遺言書があった場合、Xさんは7人兄弟で、その内、亡くなった方もいるようですから、法定相続人は10人近くになりそうです。
相続税の計算における基礎控除額は、法定相続人が多いほど高くなるため、Bさんはその恩恵を受けて、相続税の負担が大幅に軽減された可能性があります。

もっとも、養子縁組をして相続人が一人という場合、様々な手続きがスムースに行くというメリットがあります。また、XさんがBさんを我が子のように可愛がっていた事実からすれば、Xさんが養子縁組を選択されたことはとても意味があったことだと思います。

ポイント

生前対策における養子縁組と遺贈

養子縁組

子供のいない方が養子縁組をした場合、その養子は、嫡出子と同じ身分を取得し相続権を持つことになり、第二順位の親や第三順位の兄弟姉妹等は相続人にはなりません。子供がいない方にとって、兄弟姉妹や甥姪との煩雑な相続手続を回避する為に、養子縁組は相続対策として有用な手段です。

もっとも、養子縁組をすることにより、相続だけでなく扶養についても権利義務関係を生じさせますし、原則、養親の姓に変わりますので、相続以外の点についても考慮が必要です。

遺贈

相続税は相続財産が基礎控除額を超えた場合に申告が必要となりますが、この基礎控除額は法定相続人の数によって算出します。法定相続人が多いほど基礎控除額が高くなり、相続税の負担が軽減されます。
今回のケースで、養子縁組をせずBさんにすべて遺贈するという遺言をXさんが遺していた場合でも、Bさんは養子縁組した場合と同様にすべての財産を取得することができました。遺留分侵害請求の心配もありません。そして養子縁組がなければ、法定相続人は兄弟姉妹や甥姪で10人近くになったようですから、Bさんは相続税の負担において、その恩恵を受けることができました。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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