少人数ユニットであれば感染は小規模に抑えられる

  高齢者施設における新型コロナウイルス感染者の発生が、いよいよ現実となってきました。職員の発症から利用者に感染拡大するか、いきなり利用者の感染が判明するかはわかりませんが、前者の可能性が高いと考えられます。職員が感染すればすぐに接触した利用者に検査を行い、感染者が判明すれば隔離治療ということになります。この時、職員が接触する利用者の人数が少なければ感染は小規模になりますし、その逆であれば感染は大規模になります。
 例えば、10人1ユニットの新型特養であれば、感染が発生しても感染拡大は最大10名で済むかもしれません。 20人のフロアを1ユニットとしている従来型の特養でも、同様に20人で済むかもしれません。
しかし職場を固定せず1人の職員が100名の利用者のケアを行っている施設では、1人の職員の感染から同時多発的に30~40人の利用者に感染拡大させることもあり得るのです。シフトを組むのは大変ですが、当面は少人数のユニット型に固定したほうが良いでしょう。

職員の感染で利用者40人が感染し40%に生命の危険も

1人の職員からの何人の利用者に感染するのか?

特養の職員が1名新型コロナウイルスに感染していることが検査で判明したとします。職員は潜伏期間や初期の軽症の期間、仕事をしていたので、利用者に感染させている可能性が高く、職員と接触のある利用者全てに検査を実施することになります。さて、職員1名の感染が判明した時、何人くらいの利用者に感染が広がるのでしょうか?
職員は利用者に10センチ程度まで顔を近づけて介助することがあります。超濃厚接触と言える接近状態なのです。ですから、職員が感染した時の利用者への感染率は極めて高く、屋形船やライブハウスをはるかに上回ると考えられます。屋形船は100人の乗船者(従業員含む)のうち10人が感染して発症しました。あるライブハウスの参加者は100名のうち5名が感染して発症したとみられます。屋形船やライブハウスでは、顔を近づけるような濃厚接触は介護現場より少ないと考えられるので、仮に濃厚接触度が4倍程度あるとすると、感染率では、10人接触すると4名が感染し発症する計算になります。

施設の利用者が感染すると生命の危険はどれくらいあるのか?

3月25日現在、国内における新型コロナウイルスの致死率は、全年齢では4%ですが70歳以上では15%です。また、基礎疾患のある人の致死率は、糖尿病・高血圧など4疾患で6%~10%です。ですから、これらの基礎疾患が多い高齢者施設では、だいたい30%程度の致死率になると予測されるのです。更に特養などで寝たきりや胃ろうで体力・免疫力の低下が顕著な利用者も加味すると、低く見積もっても40%と高い致死率になる可能性があります。

小規模ユニット型の介護が感染拡大のリスクを減らす

前述の推定が正しければ、感染が判明した職員が100名の利用者に接触していた場合、40名に感染し12名が死亡するという事態になります。感染が判明した時の迅速な感染拡大防止措置が重要であると同時に、職員1名当たりの利用者の人数を少なくすることで、大規模な感染拡大を防ぐことができるかもしれません。

施設利用者の致死率の予測データ
・3月25日現在国内の70歳以上の有症者数275人、死亡者43人(15%)
・基礎疾患のある発症者の死亡率:心血管疾患患者10.5%、糖尿病患者7.3%、慢性呼吸器疾患患者6.3%、高血圧患者6.0%、
⇒基礎疾患による致死率の押し上げ10%程度
(参考論文:The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 NovelCoronavirus Diseases (COVID-19) – China, 2020

執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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