はじめに

◆様々な選択肢やツール、学びの場が得られるようになり、子どもたちの育ちのペースや感覚はとても多様なものになっています。個別に子どもたちの「多様性」が尊重される考えが浸透するなかで、保育園や学校といった「集団の場」でも、個々の子どもたちの考えやペースに寄り添いながらの過ごせる方法に目を向けてくれたり、合理的な配慮の幅を広げようと工夫をしてくれたりする「配慮」が広がっています。個別の配慮を検討する一方で、「一人だけルールを変えてほかの子になんと説明しようか」、「あの子はずるい・あの子は変わってるんだもんねと印象付けることにつながらないか」など、寄り添ってあげたいけれど、どう対応したらよい?と悩まれる先生も多いようです。そんなとき踏まえておくとよいポイントをお伝えします。

集団のルールを教えていくために必要なこと

①子どもとの信頼関係(まずは「お願い」を聞いてもらえる関係を)

ルールはしばりつけたり教え込んだりするためにあるものではなく、安全で快適な環境を構成するために必要な「思いやり」です。ルールを無理に強いるのではなく、お互いを思いやれる関係を育んでいく過程がなければ成立しません。  

②個々の理解度に合わせた説明や基準の幅の設置

子どもにとって急にこれまでに経験したことのないような考えや決まりを受け入れることはとても難しいことです。    
子どもたちの理解度に合わせ、受け入れやすい基準を段階的に設定すると「できた」「守れた」を積み重ねることができます。

③子どもを被害者・加害者にしない環境調整

子どもがルールを守れないのには理由があります。その理由を子どもだけのせいにしてしまうと子どもたちは困ってしまいます。大人の伝え方を工夫し、子どもに「わからないと叱られる」ではなく、「わからなくても相談できる」と思ってもらえることが大切です。

④子どもに余裕があるタイミングで教える(余裕がないときには余裕を作ってあげる)

子どもの気持ちに余裕がなくなってしまっているときに無理に教えようとすると一層頑なに「自分の考えを守ろう」としてしまいます。怒ったり、泣き出したりしてしまったときには「今日は(いまは)○○でいいことにしよう」とルールを微調整し、まずは子どもの気持ちを落ち着かせることが大切です。落ち着いたうえで「次は○○しよう」と約束する等、〝次回成功できることを目指した「切り替え」“を行うことは、甘やかしではなく、とても建設的な交渉です。

「個々に寄り添う配慮を他の子どもたちにどう伝える?」を考えるための大人の意識

集団でのルールやモラルを守れるようにするための関わりは、わからない子のための特別な措置ではありません。
すべての子どもたちに同様の権利があることを意識し、おとなの方が「ずるいこと」「特別なこと」という意識をなくしてみることからはじめると良いでしょう。

~集団の中での「個々に寄り添う配慮」を決める際のポイント~
☆新ルール・特別措置は、誰にでも適応されうるルールであることが大切
  「あの子だから」とヒトに紐づけるのではなく「こういう事情があるから」を理由にする
☆みんなが守るべき基本のルール・軸は変えず、TPOに応じた交渉の余地があることを知らせる
  どんなルールにも「余白」があり、いつでも必ず強要されるわけではないと安心してもらう意識付けが大切

「個々に寄り添う配慮」を集団で共有し、互いを理解することは多様性を尊重できる力を育むことにつながります

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