防災力

近年、ネットやテレビ、新聞などで言葉を目にすることが増えてきた地域の「防災力」とは、主に地震や台風などの自然災害による、人命や社会生活への被害を防ぐ、または小さくする力のことを言います。
これは、地震による倒壊に備えての建物の耐震補強や、津波や高波に備えた堤防などのハード面、そして地域における住民への災害別リスクと避難場所や避難時期の周知、災害発生時の情報と住民への伝達方法などのソフト面での充実度であると言えます。

過去を知る

この防災力を適切に機能させるには、その地域で過去にどれくらいの地震や洪水があり、どこの地域にどの程度の被害があったといった情報やデータを、いかに遡って正しく知ることができるか、つまり「過去を知る」ことが重要となります。
しかしながら、ペット同行・同伴避難においては、過去の情報・データがまだまだ少ないのが現状です。ペットの受け入れを行なったことによって生じる苦情やトラブルを想定して対処するためには、ペット同行避難者の受け入れを想定した、指定避難所運営を中心とする《避難訓練》を定期的に行うことが有効です。

避難訓練のメリット
受け入れる運営側も、避難する住民側も、《避難訓練》を通して【経験】という過去を知ることができます。
加えて、その過去を踏まえながら、現在の防災力でどこまでの規模の災害に対応できるか。
また、真夏や真冬、雨や雪といった気候や天候の違い、他にも満潮時や真夜中といった時間帯の違いなど、様々な状況をシミュレーションし、どこにどんなリスクがあるのかを、他の地域の似た条件の災害を知ることで把握・想定することができます。

想定外の出来事への対処

そうは言っても、災害においては想定外の被害やトラブルが起こります。
例えば、SNSなどの普及により地域外からの人の出入りも多くなるため、空き巣などの事件、ペット関係でいえば、地震による家屋の揺れと音に驚いた犬がパニックになり家から飛び出してしまったり、県外の動物愛護団体が「犬の保護」という名目で勝手に敷地内に入り、勝手に犬を連れて行ってしまったりするケースが生じています。
つまり災害というのは、過去に事例がない「想定外の事が起こる」ものとして対処することが必要です。

Point 「ペット同行避難」と「ペット同伴避難」の違いについて

SNSを見ていると、「同行避難は指定避難所の外まで一緒に行ける事で、同伴避難は避難所の中へペットを連れて入れること」と誤解されている方もいらっしゃるようですが、環境省が策定した『人とペットの災害対策ガイドライン』にはきちんと定義されています。
同行避難とは、ペットと共に移動を伴う避難行動を指し、同伴避難は、被災者が避難所でペットを飼養管理する事(状態)を指します。ただし、同伴避難についても同室で飼養管理するものでないと明記されています。
ここの、行政側と住民側との周知、共有、理解がペット同行・同伴避難の第一歩とも言えます。

執筆者情報

記事の作成・編集:株式会社まつもとひでき 代表 ドッグトレーナー、犬を愛する防災士・松本秀樹

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