事例

Aさんが、お兄様のXさんのご相続の相談にお越しになりました。Xさんは結婚しておらず、子供はいません。ご兄弟のご両親はお父様Bさん、お母様Cさん共にご健在ですので、相続人はご両親お二人となります。
Xさんは自宅のマンションをお持ちで、預貯金や株式の金融資産も多く、相続税の基礎控除を超える為、相続税の申告が必要でした。
亡くなられてからこれまで、半年の間、お父様は銀行からの案内で戸籍を取得し、預金の解約等の相続手続きを少しずつ進めていたようです。しかし、高齢でなかなかスムーズには進まず、弟のAさんが代わりに相談に来たということでした。株式については、BさんもXさんと同じ証券会社に口座を持っていた為、証券会社のサポートもあり名義変更は完了していました。

結果

相続人はご両親のBさんとCさんだけですが、二人以上であれば遺産分割協議をしなければなりません。
遺産分割の考え方についてお聞きすると、お二人とも、それぞれ不動産や預貯金等の財産を多くお持ちなので、Xさんのマンションや預貯金は二男のAさんに相続してほしいと口をそろえて仰っています。
ご自身の相続も踏まえて、これ以上の財産を増やしたくないという思惑もあるようです。
ところが、ご両親の希望に反し、AさんはXさんの相続人ではないので、財産を相続することはできません。もしAさんに相続させたいなら、Bさん、Cさん共に相続放棄をする必要があります。しかし、既に熟慮期間の3か月を経過していましたし、株式についての名義変更も完了してしまっていた為、相続放棄をすることはできません。ご両親は、相続放棄という選択肢があることも、放棄すれば相続人が変わるということも、ご存知ではありませんでした。
相続についてご自身なりに解釈していたようです。改めて、BさんとCさんで相続していただくしかないことをご説明し、ご納得の上でお手続きを進めましたが、もう少し早くにご相談をいただければ、と悔やまれる相続手続となりました。 

ポイント

相続放棄の注意点

●子の相続

子どもがいない方が亡くなり、その親が健在の場合、相続人はその親になります(父母や祖父母などの直系尊属:第2順位の相続人)。両親のうち、どちらかが健在であれば、そのひとりが相続人となります。我が子の財産を相続することは、それ自体つらく悲しいことですし、多岐に渡る手続きも、高齢の親にはかなりの負担です。


●相続権の移行

このように、親が財産を相続することを望まない場合は、相続放棄の手続きをすると、その亡くなった方の兄弟姉妹に相続権を移行できます。相続放棄により、最初から相続人とならなかったとみなされ、第2順位としての相続人がいない状態となり、第3順位である兄弟姉妹が相続人となるのです。
 なお、この相続放棄は、相続人が相続の開始があったことを知った時から起算して、原則3か月以内の熟慮期間内に家庭裁判所への申述で行います。つまり、相続人が放棄など何もせずに3か月が過ぎれば、相続を承認したものとみなされ、自動的に被相続人の権利義務を全面的に承継することとなります。これを「単純承認」と呼び、熟慮期間を経過したという事由のほか、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為は除く)にもみなされるので、注意が必要です。今回のケースでは、Bさんは早々に株式を相続してしまいました。この行為は単純承認となり、たとえ熟慮期間内であっても、相続放棄はできませんでした。株式の手続きをせず、ご両親ともに3か月以内に相続放棄の申述をしておけば、弟のAさんにマンションを相続させることができた、という事例でした。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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