質問

裁量労働制が見直されたと聞きました。具体的にどういった内容なのでしょうか。
専門業務型裁量労働制を導入している企業は、制度を継続するために必要な対応はあるでしょうか。

令和6年4月以降、制度を導入・継続する場合は、「本人の同意を得ること」が必要となります。

改正の内容

1.対象業務の追加

現在、専門業務型裁量労働制の対象業務として19業務が定められていますが、改正後は「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考察及び助言の業務」(いわゆるM&Aの業務)が追加され、20業務となります。

2.労使協定事項の追加

制度を導入・継続する場合は、労使協定に以下の事項の追加が必要となりました。

①制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
 労働者ごとに、かつ労使協定の有効期間ごとに同意を得ることが必要です。
 また制度の概要や適用を受けることに同意した場合に適用される評価制度および賃金制度の内容、同意しない場合の配置および処遇について明示することが望ましいです。

②制度の適用に労働者が同意しなかった場合に不利益取扱いをしないこと
 不利益な配置の変更や、昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うことが禁止されています。

③制度の適用に関する同意の撤回の手続き
 撤回の申出先となる部署及び担当者、申出の方法等の具体的な内容を明らかにすることが必要です。

④各労働者の同意および同意の撤回に関する記録を保存すること
  協定の有効期間中及びその期間終了後5年間(当面の間は3年間)の保存が必要です。

3.健康・福祉確保措置の強化

健康・福祉確保措置として、以下の1および2からそれぞれ一つ以上の措置を実施することが望ましいとされています。
下線の項目は今回の改正により追加された項目です。

1.事業場の対象労働者
 全員を対象とする措置
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)

・一定日数連続した年次有給休暇取得の促進
2.個々の労働者の状況に
 応じて講ずる措置
・一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
・産業医等による助言・指導または保健指導を受けさせること
・代償休日または特別休暇等の付与            ・健康診断の実施
・心とからだの健康問題についての相談窓口設置    ・適切な部署への配置転換

施行日

施行日は令和6年4月1日です。制度を継続する場合、3月末までに本人の同意を得ることおよび労使協定の届出が必要です。改正によって労使協定届の様式も変更となっていますのでご注意ください。

執筆者情報

資料作成:社会保険労務士法人アーク&パートナーズ

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