お役立ち情報
長男Aさんと妹Bさんが一緒に、お父様Xさんの相続についてご相談に来られました。相続人はお二人の他、お母様Cさんの計3人です。相続財産は不動産、預貯金、株式、生命保険です。特に不動産は代々受け継いできたもので、場所的にもかなり財産価値がある土地(約150平米)で、生前から、「先祖代々受け継いできたもので、絶対に手放してはならない」としつつ、「とはいえ、相続の時に家族の負担になってはいけない」と、Xさんは相続対策にご尽力されていたため、「相続について心配はいらないと思います」とAさん。
たしかに、生前贈与、自筆証書の遺言書、生命保険、納税資金などがきちんと準備されており、お話を伺う限りでは問題ないように思われました。遺言書は封がされていないものの、「土地は長男のAに相続させる」とはっきりと記載され、不公平にならないよう、Bさんに相続させる財産も明記されていたことで、ご家族も安心しきっていたのです。
ゴールデンウィーク明けにご相談を受けてから書類を収集し、6月に遺言書の検認申立てを行い、あとは7月1日の国税庁の路線価の発表を待つばかりとなりました。しかし、当日の発表で予想だにしないことが起こりました。
なんと、当該不動産の路線価が1平米あたり51万円もの上昇となっていたのです。このような急激な上昇は、当センターにおいても初めての経験でした。土地が150平米ほどあるため、単純計算で相続財産が約7700万円分も上乗せになってしまいます。これでは、せっかく生前に用意していた納税資金では到底足りません。
Aさん達はかなりお悩みになった末、税理士の助言なども取り入れて、遺言による分割から「遺産分割協議」に切り替える決断をされました。さらに、全体の税額を抑えるため、小規模宅地等の評価減の特例を最大限に活用し、お母様Cさんの配偶者の税額軽減を増やしたり、不足分の納税資金を作るためにやむを得ず株式を売却したりと、様々な手を尽くされました。そうして、急遽の方針転換でしたが、期限内に無事、申告と納税を済ませることができました。
Xさんが生前から家族を想って熱心に対策をされていたのにもかかわらず、近年の予期せぬ路線価の上昇という外部要因に、大きく振り回されてしまった相続手続でした。

相続税法では、亡くなられた方の遺産を「時価」で評価して課税することと規定されており、都市部における土地の評価については、「路線価」を基準として算出されます。国税庁から毎年7月1日にその年の路線価が発表されます。1月から6月までに亡くなった方の遺産に対する路線価は7月の発表まで待たなければなりません。
都市部におけるインフラ再開発や地価高騰を背景に、路線価はここ数年で著しい上昇傾向を見せています。かつて
相続税といえば「一部の富裕層だけに課されるもの」というイメージがありましたが、その常識は今や大きく変わりつつ
あります。特に地価高騰が顕著な東京都内に不動産を所有している場合、「約2割(5人に1人)」が相続税の
申告が必要といわれ、たとえ相続財産が自宅と僅かな預貯金のみであっても、路線価の上昇によって基礎控除額を
上回り、申告義務が生じるケースが増えています。
そうした、故人の遺志が記された「遺言書」ですが、たとえ存在していても、相続人や受遺者の全員が合意しているのであれば、異なった内容の「遺産分割協議」を行い相続を進めることは可能です。今回の事例のように、予期せぬ地価高騰で税負担のバランスが変わるなど、「状況に合わせて分け方を変えた方が税金面でも有利になり、結果として家族全員が円満に相続できる」と全員が同意できるのであれば、柔軟に話し合いで決めることができます。
ただし、遺言で遺言執行者が指定されている場合や、第三者への遺贈が含まれている場合などは注意が必要です。
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
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