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| ■エスカレートする息子 Mさん(78歳女性)は要介護2で訪問介護サービスを週2回利用しています。同居の息子さんは電気店を営んでおり、日中は家に居ません。ある日の夜、息子さんから電話があり「ヘルパーが母をベッドにドスンと落した。腰を痛めたので病院に行く」との連絡がありました。受診先に急行した職員に、息子さんが「腰椎圧迫骨折で1カ月は安静が必要と言われたが、自分では介護できない」と話しました。サービス提供責任者が「できる限りのことをさせてもらいます。何でもおっしゃって下さい」と伝えると、息子さんは「ありがとう、よろしく頼みます」と安心した様子でした。 |
■事故の補償をサービスで要求
訪問介護のヘルパーの過失が原因で事故が発生し、利用者のADLが低下して家族の介護負担が増えると、その事故の補償として事業者にサービス提供を求められることがあります。家族は「事故が原因で介護負担が増えたのだから、加害者である事業所が負担するのは当然」と考え、事業所にその負担を肩代わりするよう要求するのです。
この要求に対して事業所は、介護サービスの提供回数を増やすことで損害を補償しようとします。このように、事故によって生じた損害を自社のサービス提供で補償することを「自前補償」と言います。介護事業者は、困っている家族を前にすると「できることはしなければならない」と考え、サービス提供を増やしてしまいがちです。しかし、この自前補償は道義的にも法的にも問題があり、その後の大きなトラブルにつながるおそれがあります。そのため、慎重に対応しなければなりません。

■自前補償の問題点
自社の過失で起きた事故の補償のためにサービス提供を増やすと、その分の提供で利益が生じることがあります。しかし、過失による事故をきっかけに新たな業務を受け、利益を得ることは、社会的な公平の観点から適切ではありません。
また、賠償事故の損害について損害保険から給付を受けると、本来加害者が負うべき賠償の多くを免れることになり、不当な利益につながるおそれがあります。そのため、後日、国保連から第三者行為による求償が行われる可能性もあります。さらに、介護サービスの利用者負担である1割分を事業者が無償にすることも、法令上の問題を生じるおそれがあります。
■事故の負い目から要求をエスカレートさせる
本事例のように、事故の補償として加害者である事業所自らがサービス提供を行うと、ケガが治っても 「まだ痛みが残っているので、サービス提供を続けてほしい」と求められ、いつまでも終了しにくくなります。
このような場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。「事故によって生じた損害の補償を、加害者である事業者が自ら行うことはできませんので、他の事業者に依頼してサービス提供を行います」と説明し他の訪問介護事業者に引き継ぐ必要があるのです。
監修 株式会社安全な介護 山田 滋
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