お役立ち情報
Aさんから、10年前に亡くなったお父様の、未だ手つかずの相続についてご相談がありました。
相続人はAさんとお母様のYさん、障害をお持ちで入院中の弟のBさんの三名です。ご相続発生当時に相談した専門家から、障害により事理弁識能力がないBさんには成年後見人の選任が必要と言われて以降、ご実家の不動産名義はもちろん、預金の解約などもできないまま、すべてのお手続きが止まってしまっていたそうです。
しかし、最近になって相続登記の義務化のニュースを聞き、預金はともかく、不動産の名義変更はしておかなければならないと思い、当センターをお訪ねになったとのことでした。
地方ご出身のAさん。Bさんが入院する病院もご実家の近隣です。お母様は高齢で足腰が弱くなり、Bさんの病院に通うことが難しくなっていても、都会暮らしで多忙なAさんも、なかなか看病に行くことができない状況でした。
Aさんは、後見人選任の必要性は認識しつつも、Aさんやお母様が後見人になれるならまだしも、そうでないなら、後見人の選任申立てはしたくないとお考えでした。後見人の推薦は、最終的には家庭裁判所が選任します。現状、ご家族が選ばれるとは限らないこと、専門家と共に複数で選任されるケースもあることなど、懸念事項が多かったのです。また、専門家が後見人として選任された場合、事理弁識能力が回復するまで(回復されなければ亡くなるまで)、その費用がずっと発生します。Aさんは費用負担もさることながら、家族の間に他人が一生涯入り込むことに、違和感を抱いているようでした。
そこで、ご相談当時、成年後見制度について、一度利用すると死亡するまで後見人が付き続ける点について、見直しが検討・議論されていることをお話しました。Aさんは「それなら、民法の改正と施行がいつになるか分からないが、その改正を待ってから進めたいと」判断されました。しかし、期限までに相続登記の義務を果たさないと、違反すると過料に処せられる可能性があったため、法改正に伴い新設された相続人申告登記(相続人であることを申し出るもの)を行いました。これにより、義務を果たしたことになり、過料を回避することができたのです。

これまでの成年後見制度は、本人の判断能力の状況に応じて、後見・保佐・補助の3つの制度が設けられて おり、後見制度を利用すると原則としてやめられない(本人の判断能力が回復しない限り一生涯継続する) といった課題がいくつか指摘されていました。例えば、今回の事例で懸念されていたように、遺産分割協議という特定 の手続きのためだけに必要であっても、それ以降も後見人がつき続けることになります。その他にも、包括的な代理権 が後見人に与えられることで、生活のすべてを管理されてしまう点や、形式的な権利擁護や身上監護の優先により、 本人の意思が尊重されにくいといった点も指摘されてきました。
そんな中、今般、成年後見制度を抜本的に見直す改正民法が参院本会議で可決・成立しました。
これにより、現行の3つの類型を廃止して「補助」の制度へと一本化し、本人の判断能力や個別の事情に応じて、 必要な場面・範囲で支援内容を個別に設計していく「オーダーメード型」の利用が可能となります。また、終身利用の 原則が見直され、特定の目的が完了するなど「必要がなくなった」と認められた場合には、同意権や代理権の審判を 柔軟に取り消し可能な規定が設けられ、特定の目的に限定した支援や、期間を区切った利用が可能になります。
制度開始から、一度始めたらやめられないことや、包括的な代理権による心理的・金銭的ハードルが高かった成年 後見制度ですが、この抜本的な法改正により、より利用しやすい制度となることが期待されています。
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
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