Yさんのご相談はお兄様のXさんのご相続についてでした。Xさんは20代で離婚後、ずっとひとり暮らしで、最期はいわゆる「孤独死」でした。
Xさんのお子様はふたりいらっしゃるそうですが、生まれて間もなく元妻のZさんと音信不通となり、離婚後は会うことはなかったようです。Yさんは、お子様のAさん・Bさんの連絡先はもちろん、その生死すらもご存知ないとのことでした。やむなく相続人ではないYさんが葬儀費用等を立て替えたものの、年金暮らしのYさんにはその費用負担が重くのしかかり、せめてXさんの未支給年金だけでも受け取りたいと困り果てた末、当センターにご相談にいらっしゃったのでした。「相続人ではない方からのご相談」という異例のケースとなりました。
相続手続を行うには、まずは、相続人であるAさん・Bさんと連絡をとらなければなりません。Yさんは親戚のつてを辿って元妻のZさんの行方を捜すも、なかなか見つけられずにいました。そこで、Yさんが自ら立て替えた葬儀費用を請求する目的で、Xさんの相続人調査として専門家に依頼することにしました。数か月後、お子様お二人ともの現住所を確認することができ、さらにYさんからのお手紙にも応じてくださいました。
そうしてようやく、相続人であるAさんからセンターにご依頼をいただくことで、相続手続を開始することができました。AさんとBさんは仲の良いご兄弟で、もめることなく遺産分割協議も迅速に調い、Xさん名義の銀行預金口座の解約手続も順調に済みました。そのお金で、Xさんが30年以上住んでいたアパートの退去費用や遺品整理費用、溜まった家賃や水道光熱費を精算。また、「Yさんが立て替えていてくれた葬儀費用や、相続手続にたどり着くまでの諸費用をすぐにお支払いしたい」と申し出てくださり、Yさんのご苦労も報われることとなりました。
今後も増加の一途が懸念される「孤独死」ですが、その場合の相続手続は煩雑となります。
もしもの場合に備えて遺言書やエンディングノートなどの生前対策が重要であると痛感しました。

一人暮らしの方が自宅などで誰にも看取られずに死亡し、そのまま一定期間発見されない状態である孤独死。年々増加傾向であることを懸念し、自治体による孤独死対策も実施されています。それ以外にも、定期的に様子を確認してもらえるように、近所の人・友人・家族と連絡を取り合っておく、民間のサービス・任意後見契約や見守り契約を利用するなど、個人的な対策も有効です。また、子の有り無しにかかわらず、遺言書もひろく有効な対策としておすすめです。
相続人は故人の財産を引き継ぎますが、孤独死の場合は、未払いの家賃、光熱費や原状回復費などのほか、発見が遅れると特殊清掃の必要性から多額の費用が発生することがあり、相続放棄を検討される方もいるようです。
また、「お一人様」の孤独死であっても、相続手続は相続人しか行うことができません。子がいない方は、その両親、又は兄弟姉妹(既に亡くなっている場合は甥姪)など第二、第三順位の相続人が相続人として手続きを行うこととなります。しかし、今回のケースのように、どんなに疎遠であっても、子がいる場合は、その兄弟姉妹等に相続権はなく、預金口座の解約などを行うことはできないため、子に連絡を取って手続きをしてもらう必要があります。
なお、子がいたとしても、相続放棄を行ったり、第二順位以降の相続人が亡くなっていたり、全員が相続放棄をした場合は、相続人不存在として扱われます。
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
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