Aさんから叔母のXさんのご相続でご相談がありました。生涯独身でお子様はおらず、ご両親やお祖父様お祖母様も既に他界していたXさんの相続人は兄弟姉妹(甥姪)となります。相続人を確定するためには、Xさんの出生から死亡までの連続した戸籍だけでなく、Xさんのご両親、すなわちAさんのお祖父様、お祖母様の出生から死亡までの戸籍も必要となります。通常の手順を踏んで、最終的には無事にお手続きを終えることができましたが、戸籍を取得していく中で、驚くべき事実が明らかになりました。
結婚前はそれぞれの親(家制度では戸主)の戸籍にいるはずなのに、お祖父様お祖母様は、出生からの戸籍が同じでした。昔の「家制度」の戸籍では、「戸主」を中心に、戸主の親、子、兄弟、孫、甥姪を含め家族全員が同じ戸籍に記載され、分家等で新しい戸籍を別に作らなければ戸主の兄弟が結婚して子供が生まれてもどんどん同じ戸籍に記載されていきます。お祖母様が戸主の娘として出生した記載のある戸籍は、お祖父様が戸主の一番下の弟として記載されている戸籍でした。つまり、お祖父様とお祖母様は「叔父と姪」の関係だったのです。
子沢山だった時代では、長子と末子で親子ほど歳の離れた兄弟も珍しくなく、今回のケースでも、叔父と姪といえどお祖父様とお祖母様の年齢は5歳と離れていませんでした。その後、戸籍にはお祖母様の子としてAさんのお母様(Yさん)が出生により加わり、お祖父様がYさんを認知をした記載も加えられていました。
近親婚は民法で禁止されており、「叔姪婚(おじ姪・おば甥の結婚)」も認められない為、お祖父様とお祖母様は結婚することができませんでした。その後も二人の間にXさんが生まれ、お祖母様の子として同じ戸籍に入りお祖父様が認知をするという形をとることで、親子全員が同じ戸籍に入ることはできました。しかし、その後、家制度が廃止され、夫婦とその子供の二代までしか同じ戸籍に入れなくなった際、夫婦でないお祖母様はお祖父様の戸籍には入れず、お祖母様とXさん、Yさんだけの戸籍が新たに編製されました。一方、お祖父様はおひとりだけの戸籍を作ることとなり、亡くなるまで一人きりの寂しそうな戸籍でした。
Aさんは、お祖父様お祖母様が叔父と姪の関係だったことを初めて知り、驚かれていました。道ならぬ恋とは言わずとも、法律では認められない夫婦であったことを微塵も感じさせず、ごく普通の夫婦として過ごされていたそうです。夫婦や親子の多様性が認められていく現代、法律婚の意義も揺らぎ始めています。家族のあり方の奥深さを改めて感じた案件となりました。

昔の「家制度」の戸籍では、「戸主」を中心に、戸主の親、子、兄弟、孫、甥姪を含め、分家等で新しい戸籍を別に作らなければ家族全員が同じ戸籍に記載されていました。戦後、日本国憲法のもとに「家制度」が廃止され、戸籍法改正で戸籍は「夫婦と氏を同じくする子」を単位とする戸籍に変更され、「戸主」という概念がなくなりました。夫婦とその子の2代までしか同じ戸籍に入れなくなった為、その他の方は新しい戸籍の編成が必要になりました。
この改正はこれまで、個人の尊厳と両性の本質的平等を具体化するものでしたが、現在では、選択的夫婦別姓や多様な家族形態に対応しきれないという課題が指摘されています。
法律婚は最も一般的な婚姻の形で、婚姻届を提出することで法律上の夫婦と認められ、いずれかが筆頭者となった新しい戸籍が編成されます。一方、近年では、相互に婚姻の意思があり、社会的にも夫婦と認識されていながらも、婚姻届を提出しない事実婚を選択する方が増えています。表面的には夫婦として成立していても対パートナーの税制面や子の法的格差など、法律婚と異なる点があることに注意が必要です。特に相続権の欠如によりパートナーに財産を受ける権利がないため、遺言書の用意は必須と言えるでしょう。なお、婚姻届けを”提出したくてもできない”同性婚を巡る訴訟は、控訴審判決が出揃っており、最高裁の判断が待たれる状態となっています。
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
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