Aさんから、姉Xさんの相続についてご相談をいただきました。Xさんは生涯独身でお子様はいらっしゃいません。Aさんとは二人姉弟で、ご両親は既に亡くなっていることから、相続人はAさん1人となります。XさんはAさん名義のご自宅に同居されており、相続財産は銀行預金のみで、不動産はなく、相続税の申告も不要のようで、手続きはスムーズに進みそうです。
そんな中、Xさんの財産をお聞きしながら手続きを説明したところ、Aさんから「昔、税理士に相談して税務署に書面を提出したのだが、それが今回の相続に影響するのではないか」とのご質問をいただきました。
ご自宅の金庫に眠っていた書面は、40年以上前の日付で税務署の印が押され、借地権者にお母様、所有者にAさんが署名されている「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」というものでした。
詳しくお話を伺うと、もともと借地の敷地にお父様名義の家があり、お父様が亡くなられてからもご家族でお住まいでした。その後、借地契約の更新の際に、Aさんが地主から底地を買い取ったとのこと。Aさんは家を建て替え、平成になってからお母様が亡くなっています。
親が借地している土地の底地部分を子が買い取った後に、親子間での地代のやり取りがない場合は、親が有していた借地権が子に贈与されたものとみなされ、贈与税が発生します。これを避ける為には、 借地権者は親のままで、贈与はないということを税務署に申出をする必要があります。 申出書を提出した場合、借地権は元の借地権者の相続財産として相続税の課税対象と なります。お母様が亡くなっている為、土地の2分の1の借地権がXさんの相続財産となり、 銀行預金も合計すると、相続税の基礎控除を超える為、相続税の申告を行うこととなりました。
40年以上前のことをAさんが忘れずにいてくださったおかげで、申告漏れを防ぐことができました。Aさんは、ずっと気がかりだったようで、ようやく心配から解放されると、ほっとされていました。

借地権とは、建物の所有を目的として地主から土地を借りる権利です。相続税や贈与税の課税対象となる財産として評価されます。一般的に借地権の評価は、自用地評価額(所有権として評価した額)に「借地 権割合」を乗じて算出します。
「借地権割合」とは、土地全体の価値のうち、借地権が占める割合を示したもので、地域ごとに7段階で定められています。仮に借地権割合が70%の地域の場合、底地の評価は30%、借地権の評価は70%となり、土地を所有してない場合でも、借地権として高く評価されることがありますので、相続や贈与に当たっては注意が必要です。
例えば、親が地主から土地を借りている(「借地権」)場合で、その「底地」を子が地主から買い取り、その後、親子間で地代のやり取りをしないとすると、親の持っていた「借地権」は消滅、子が「底地」と「借地権」、つまり土地全体を所有することになります。すなわち、子は「借地権」を無償で手に入れたことになるため、親から子への贈与があったものとみなされます。その際、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を税務署に提出することで、地代のやり 取りは無くても、借地権は借地権者に存在し続けるという主張が通り、贈与税を回避することができます。ただし、この場合、親が亡くなった際に借地権を相続財産として計上する必要があり、申出書を提出したことを忘れてしまうと、相続税の申告漏れ等のリスクにつながりますので注意しましょう。
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
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