お役立ち情報

5月号「遺言書の種類と注意点」 ~秘密の遺言~

2026/04/30 相続
5月号「遺言書の種類と注意点」 ~秘密の遺言~
 
オリジナルファイルのダウンロードはこちら ダウンロード
 

事例

ご主人Xさんを亡くされたAさんからご相談をいただきました。
お二人の間に子はなく、相続財産はご自宅とマンション一室と県外の土地、預貯金、株式のようです。
Aさんのご自宅に伺い、詳しくお話をお聞きすると、20年前に公証役場に行って、夫婦で遺言書を作成されたそうです。早速見せていただきたいと申し上げたところ、Aさんは自宅の金庫から二つの封筒をお持ちになりました。封筒には、封筒の綴じ目の他、表紙に貼付されている書面に、たくさんの印が押されています。「公正証書遺言」を想像していたので驚きました。ご夫婦が公証役場で作成されたのは、「秘密証書遺言」だったのです。

 

結果

「秘密証書遺言」は民法が定める遺言書の一つ(970条)ですが、その手続きの複雑さや利便性の悪さから、ほとんど使われていないのが現状です。遺言書は封がされていますので、自筆証書遺言と同じく家庭裁判所で検認を受ける必要がありました。
検認を受けて内容を確認したところ、市販の遺言キットに財産内容や遺言者の希望が記載されていました。
問題は、20年前に書かれたものであるため、記載されている財産が現状と合わない記載のものが多数あったこと。また、遺言執行者として指定されている弁護士はXさんのお友達で、既に亡くなられていることもわかりました。
裁判所で遺言執行者の選任申立てを行い、手続きを進めました。遺言書に記載のない財産については、Xさんの兄弟姉妹と遺産分割協議書の作成が必要となり時間を要しました。
公証役場に行かれたのなら、手続きの複雑さや内容が不備となるリスクを考え、公正証書での遺言作成が最善の策だったでしょう。そして、作成から20年が経過しているのであれば、事情の変化を考慮し、遺言内容の見直しもするべきでした。

遺言書の種類と注意点

●主な遺言の方式

遺言の方式は、一般的に知られている、遺言者が自筆で作成する自筆証書遺言と、公証人が公正証書で作成する公正証書遺言があります

●秘密証書遺言

その他、遺言の内容を秘密にしたまま、公的にその存在を証明してもらう秘密証書遺言という方式があります。
この秘密証書遺言は、まず遺言者が遺言書を作成し署名・押印した上で、封筒に入れ、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封筒の封じ目に封印します。遺言者は封印した封筒を公証役場に持参し、公証人、証人2人の前で、「これは自分の遺言書である」と申述します。公証人が封筒に提出日付、遺言者の申述内容などを記載して署名・押印し、遺言者と証人も署名・押印して手続きが完了します。この秘密証書遺言は、公証人や証人にもその内容を知られることがなく、完全に秘密の保持ができることがメリットとして挙げられます。
一方、公証人が遺言書の存在を証明してくれるものの、内容が不備で無効となるリスク、紛失や隠匿のリスク、家庭裁判所での検認が必要など、自筆証書遺言と同じリスクや煩雑さが残ります。このような点から、あまり使われていないのが現状です。

●やっぱり公正証書遺言が安心

遺言を作成する際には、リスクを回避し検認も不要な、公正証書遺言での作成をお勧めします。
なお、令和7年10月1日より、公正証書遺言を含む公正証書の作成手続きがデジタル化され、公正証書の原本が従来の紙ではなく電子データとして作成・保管され、正本・謄本の交付方法も柔軟化したり、自宅等からのオンライン作成が可能になったりと、制度改正により、利便性の向上が普及されることも期待されています。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会