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| ■利用者の写真に癒される Mさん(20歳女性)は、3月に専門学校を卒業して採用されたデイサービスのスタッフです。明るい性格で利用者に気さくに声をかけるため、すぐに人気者になりました。Mさんは、認知症の利用者Kさんの隣に座り、顔を近づけて スマートフォンで自撮りをします。写真を見せるとKさんが大喜びするので、Mさんは繰り返し自撮りを続けました。 さらに、その写真をスマートフォンの待ち受け画面に設定しました。主任がそれを見つけ、「利用者の写真を個人のスマートフォンの待ち受け画面に設定するのは問題だ」と本人に注意しました。ところが、Mさんは「Kさんはとても可愛いので癒やされるんです」と気にする様子もありませんでした。主任は、個人のスマートフォンの画面であれば問題ないと考え、それ以上は注意しませんでした。 |
■スタッフMの行為は規則に反しないか?
スタッフMさんは、利用者の写真を撮って個人のスマホの待ち受けに設定することを、規則違反ではないと考えていますが、本当にそうでしょうか?まず、本人の了解無くその容姿を撮影する行為は「肖像権の侵害」という人権侵害行為で不法行為とされます。たとえ撮影した写真を公開しなくても、撮影する行為そのものが人権侵害になるといえるのです。
次に、就業規則には守秘義務(秘密保持義務)があり、業務上知り得たことを社外に漏らしてはいけないという規則があります。利用者の顔写真を待ち受け画面に設定すると、社外の人に見られてしまう可能性も考えられ、守秘義務違反や就業規則違反として懲戒処分の対象にもなり得ます。

■業務中の個人のスマホの使用制限
業務中の職員個人のスマートフォン使用を巡っては、本事例のようなトラブルが数多く発生しており、管理者にとって頭の痛い問題となっています。入所施設などでは、職場内への個人のスマートフォンの持ち込みを規則で制限する施設もありますが、今や個人のスマートフォンは生活に直結する情報の生命線でもあります。
小さい子どもを持つ親であれば、学校から緊急の連絡が入るかもしれませんし、不審者発生情報など、防犯に関わる地域の緊急情報も重要です。このように、職場への持ち込みを全面的に禁止することは現実的には難しいため、持ち込みを制限できないのであれば、業務時間中の使用方法について細かな制限を設ける必要があります。
■利用者が喜べば何をしても良いか?
認知症の利用者本人が喜べば、それでケアの質が向上したと言えるのでしょうか。介護保険法には「人格尊重義務」という、職員に課された義務があります(介護保険法第74条第6項)。介護職員は、利用者の人格を尊重し、誠実に業務を行わなければなりません。認知症の利用者の人格を貶めるような行為は、この人格尊重義務違反に該当するおそれがあります。この義務に違反すると、最悪の場合、指定取消しのような厳しい行政処分が課されます(虐待や身体拘束も同義務違反に当たります)。
もうひとつ、介護に従事する職員として大切なことがあります。それは、本人が喜ぶことを家族がどう受け止めるかという視点です。利用者を介護職員が勝手に「ちゃん付け」で呼べば、本人が喜んでも、家族が親を敬 う心情を著しく傷つけ、精神的苦痛を与えかねません。介護サービスでは、利用者のほかに「利用者を敬う家族」という大切な存在がありこの家族の心情への配慮も忘れてはならないのです。
監修 株式会社安全な介護 山田 滋
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