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2月号「成年後見制度」~任意後見契約は結びましたが・・・~

2026/02/02 相続
2月号「成年後見制度」~任意後見契約は結びましたが・・・~
 
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事例

Aさんから、Xさんの相続の件でご相談を受けました。Xさんとその奥様Yさんとは家族ぐるみでお付き合いをしていたAさんは、ご夫婦の任意後見人でもあるとのこと。仕事上の関係から徐々に親交を深め、ご夫婦にお子様がいなかったため、一回り年下のAさんがご夫婦の老後の面倒を見ようと、任意後見契約を結ばれたという経緯でした。
概略をお聞きした後、奥様のYさんにお会いすると、Yさんは高齢ながらも判断能力はしっかり持っていらっしゃいました。この場合、任意後見契約は発動せず、AさんはYさんの任意後見人に就職することはできないことをお伝えしなくてはいけませんでした。なぜかというと、任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になったときに初めて効力が生じ、契約で定められた任意後見人が任意後見監督人の監督の下に、契約で定められた特定の法律行為を本人に代わって行うという制度だからです。

結果

そのため、Xさんの相続手続はYさん自身が行う必要があります。Yさんの代わりに相続手続をするつもりでいたAさんは、任意後見人になれないことに驚き、落胆されていました。
あらためてYさんから相続手続についてのご依頼をいただき、戸籍を取得して相続人を確定 していったところ、Xさんには前妻との間にBさんがいらっしゃることが分かりました。前妻との間の子の存在については、AさんはXさんからそれとなく聞いていたようでしたが、肝心のYさんは初耳だったようです。 相続人は奥様Yさんと子のBさんの二人となり、遺言等はないため、見知らぬBさんと遺産分割協議を行う必要があります。Bさんとの交渉も、もちろんYさんが自分で進めていく必要があります。Yさんは、夫婦で築いた財産を渡すことに抵抗がありました。Bさんと何度もやり取りを繰り返しましたが、結局、法定相続分(2分の1)をBさんに渡すことで協議が成立しました。遺言があれば、Bさんから求められたとしても遺留分相当(4分の1)で済む上、意に沿わない協議を延々と行う必要はありませんでした。 

終活の一環として老後に備えることは重要ですが、生前の対策となる任意後見契約だけでなく、遺言の作成など、 亡くなった後の備えもしっかりと意識することも大切です。

 

成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」があります

●「法定後見」

被後見人となる本人が、既に判断能力が不十分な場合に利用する制度です。親族等の申立てにより、家庭裁判所が後見人等を選任します。報酬も後見人等の申立てにより家庭裁判所が本人の財産から付与します。

●「任意後見」

一方でこちらは、本人に判断能力があるうちに利用する制度です。すなわち、自分がいずれ認知症や障害により判断能力が不十分になった場合に備えて、自己の生活、療養看護、財産の管理などに関する事務を、自らが選んだ信頼できる人(任意後見人)とあらかじめ契約しておくというものです。成年後見とは異なり、報酬なども含めて自ら決めておけることがメリットともされています。なお、この契約は公正証書で作成する必要があり、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立を行います。そうして任意後見監督人が選任されることにより、効力が生じ、契約で定められた任意後見人が、任意後見監督人の監督の下に、契約で定められた特定の法律行為を本人に代わって行うことができます。

●遺言書の必要性

しかし、今回のケースのように、前妻(夫)の子がいる場合で故人が遺言書を残されていないと、配偶者は、その子との間で遺産分割協議を行う必要が生じます。遺言書で「配偶者に全財産を相続させる」としていれば、配偶者はその子からの遺留分の請求(遺留分侵害額請求権)があっても、遺産分割協議はぜず、相続財産を取得することができます。今回も、そのような遺言書があれば、YさんがBさんに支払う額は相続財産の1/4(遺留分)で 済み、煩わしい遺産分割協議を避けることができました。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会