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| ■職員の猛省を促せば解決するか? ある特養で入浴介助中に職員が浴室を離れたため、利用者が溺水して死亡するという痛ましい事故が起きました。事故の状況は職員が入浴介助中に他の業務(介護記録のタブレットへの入力)を思い出し、それを行うために浴室を離れた結果、無人の浴室で利用者が溺れて亡くなったというものです。家族の怒りは収まらず、職員に対する刑事告訴の話も出ているようです。 |
■「言われなくても当たり前」は管理者の甘え
ルール違反が原因で事故が起きた場合、その原因を「事故を起こした職員のモラルの低さ」に求める管理者がいます。しかし、それは妥当な判断でしょうか。管理者だけが「言われなくても当たり前」と考えている可能性もあります。組織の中でルールを守らせるためには、ルールの周知徹底と罰則の明確化が必要であり、これらは管理者の責務です。
本事例の事故は、職員のみの責任と断定できません。介助上の安全ルールを職員に徹底していなかった管理者側の責任や、管理者を適切に指導・監督してこなかった法人組織の責任も考慮すべきです。であるならば、管理者向けに安全ルールの徹底方法を指導する研修を実施すべきではないでしょうか。具体的にどのようにすれば安全ルールを確実に徹底できるのか、検討が必要です。
■安全ルールの徹底に必要な3条件
事故防止活動にはヒヤリハットなどの事故リスクの兆候をアセスメントする活動もありますが、誰の目から見ても危険な介助行為を絶対にさせないという「安全ルールの遵守」の取り組みが必要です。安全ルールを徹底するには次の3条件が必要です。
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①ルールを明文化し周知する 暗黙の了解はルールとして機能しません。必ず文書化して全員に周知することが必要です。可能であれば「やってはいけない行為の具体例」を挙げて示すと、現場での理解と実践が進みます。
②罰則を周知する 重大なルール違反によって死亡事故などが発生した場合、業務上過失致死などで刑事責任を問われる可能性があります。また、施設が賠償金を負担した場合に法人が職員に対して損害賠償を求めることがあり得ることなど違反した際の具体的な責任と結果を明確に伝えておく必要があります。
③ルールを守れる環境を整備する ルールを守りたくても守れないような人員配置や業務負荷、設備・手順の不備があると、やがて組織全体でルール違反が常態化します。ルールを実行可能にするための体制(適切な人員配置、業務分担の見直し、必要な設備・支援ツールの整備など)を管理者が整えることが重要です。 |

■ルールが明確になっていない組織では危なくて働けない
介護業界は現在、未曾有の人材不足に直面しています。職員は勤務先を自由に選べる時代です。どのような施設を選べばよいでしょうか。ルールが徹底されていない施設では、職員がいつ個人として責任を問われるかわかりません。そのような施設で働きたいと考える人がいるでしょうか。
監修 株式会社安全な介護 山田 滋
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